【声劇台本】バレンタインデーの早朝

茶屋

バレンタインデーの早朝

■登場人物

 矢島 宣男[やじま のぶお](♂):高校生。

 山路 保 [やまじ たもつ](♂):高校生。

 伊藤 裕樹[いとう ひろき](♂):高校生。もてる系。

 上野 弓 [うえの ゆみ ](♀):高校生。普通女子。辛口。

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■配役(3:1:0) 所要時間:

 矢島(♂)[L38]:

 山路(♂)[L33]:

 伊藤(♂)[L22]:

 上野(♀)[L15]:

  ※L**:セリフ数

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 矢島:「遂に、この日が来てしまったか・・・!」


 山路:「メンタル・コンディションはベストだ。」


 矢島:「ああ、逃げる訳には行かない。

     俺達は、今日を生き抜き、明日へと向かう!」


 山路:「いざ! 戦いの場へ!」


 矢島:「出陣!!」


 伊藤:「はよーっす。」(のんきに)


 山路:「だああ! なんだよ、ギアを入れた矢先!」


 伊藤:「いや、はよーっす。」


 矢島:「なんだその気の抜けた顔は!

     俺達はこれから戦場へ足を踏み入れようというのに!」


 伊藤:「挨拶は大事だぞ。おはよーぅ。」


 山路:「・・・はいはい、グッモーニン。」


 矢島:「おはよ。」


 伊藤:「で、さっきから校門の前で何やってんの?」


 矢島:「見てたんかーい!」


 伊藤:「なんか気持ち悪かったんで、声掛けるタイミングが分からなくてさ。」


 山路:「にしては、ベストでバッドなタイミングに声かけやがったな!」


 矢島:「なんというKB野郎!」


 伊藤:「ケー・ビー野郎? ・・・クソ豚野郎?」


 矢島:「いや、そこまで酷くは無いんだけど・・・。」


 山路:「”空気ブレイカー”だよ。空気をぶち壊す奴ってこと。」


 伊藤:「そんなことより早く行こうぜ。寒くないのか?」


 矢島:「待て待て! もう一度、自己暗示をかけ直さないと。」


 山路:「ナチュラルなフェイスをキープしないとな。」


 伊藤:「なんで?」


 矢島:「そわそわしてたり、期待してるような顔なんか格好悪いだろ!?」


 伊藤:「なんでそわそわするんだ?」


 山路:「今日はアレだぞ、あの日だぞ!

     口にするのもはばかられる・・・あの日だぞ!?」


 伊藤:「・・・テスト?」


 矢島:「お前、本気で言ってんのか? なんでそんなに普通でいられるんだ?」


 山路:「感じないのか?いつもと変わらぬ日常を装いながらの、 

     言葉にできない変な感じの応酬が!」


 矢島:「貰える予定が有る奴や、

     既に貰った奴のあの余裕感を嫌でも肌で感じる・・・。」


 山路:「それとは反対に、普段どう歩いていたのかも忘れてしまったような

     ロボット男子生徒が散見!」


 矢島:「いや、むしろ自分達もそうなっているんじゃないかという思いに囚われ」


 山路:「席を立つことすら怖くなってしまい、

     トイレを我慢しちゃうくらいだぞ!」


 矢島:「だが、それがまた逆に不自然さを感じさせたりして、

     普段の自分を取り戻す戦いが始まるんだ。」


 山路:「自分とはどんな男だったか? どんな人間だったか?

     立ち上がるときは右からか、左からか?」


 矢島:「お前もそうなったことあるだろう!?」


 伊藤:「あ・・・っと、ごめん。途中から分かんなくなっちゃった。」


 矢島:「つまり!”あ~、アイツぅ~チョコ期待しているんじゃな~い?”

     って思われたくないんだよ!」


 伊藤:「ああ。去年、クラスの女子に気持ち悪いって言われてたもんな。」


 矢島:「ガフッ・・・!!

     お前は悪魔か!! オレの息の根を止める気か!」


 山路:「そうか、分かったぞ! 

     お前には妹が居たな! だから余裕なフェイスで勝ち組気取りか!」


 矢島:「母親と親族はノーカウントだぞ!」


 山路:「ノーカウントだ!」


 伊藤:「いや、別にまだ貰ってないけど・・・。」


 上野:「おはよー。」


 伊藤:「あ、上野。はよーっす。」


 矢島:「お、おはぁーよー。」(ぎこちない)


 山路:「ぐっもーにんぐ。」(ぎこちない)


 上野:「どうしたの? なんか気持ち悪いよ?」


 矢島:「ぐあぁ・・・!」


 山路:「辻斬りだ! なんてナチュラルに人の心を斬るんだ!」


 矢島:「オレは、もう、駄目だ・・・。今日は休むと担任に・・・・。」


 山路:「しっかりしろ! 傷は浅い。ノープロブレムだ!」


 上野:「そうそう、これ。山路にあげるよ。」


 矢島:「え?」


 山路:「わっつ(What's)?」


 上野:「手作りなんだ・・・おいしくなかったらゴメンネ。」


 矢島:「な、なんだと! それは、チョコ・・・!」


 山路:「しかも・・・ハンドメイド!」


 伊藤:「良かったじゃんか。」


 矢島:「ば、馬鹿な・・・なんで、お前だけ・・・?」


 山路:「Oh! マイ・スウィィート!」


 矢島:「コイツより俺が劣るということか? どこが違うってゆーんだ?」


 伊藤:「まぁまぁ。」


 矢島:「その余裕さに腹が立つ!」


 山路:「まぁまぁ。」


 矢島:「見下した感じが鼻につく!」


 伊藤:「チョコぐらいいいじゃん。」


 矢島:「良くない! 男にとっては死活問題だろ! お前の方がおかしいぞ!」


 上野:「だって、伊藤君は貰えるでしょー? 普通に。」


 矢島:「分かってはいたが・・・

     女子の証言となると攻撃力が段違いだな・・・。」


 上野:「だって、優しいしー。」


 矢島:「でた! お前たち女子は、本当の優しさというものを知らないんだよ!」


 山路:「まぁ落ち着けよ。ビー・クゥーール。」


 矢島:「何がビークールだよ! 

     チョコ貰った奴はそんなに偉いのか? えぇ!?」


 上野:「まったく、なんで矢島みたいなのがイイんだか・・・。」


 矢島:「あ? オレが何だよ?」


 上野:「なんでもないけど~。」


 山路:「まぁ、チョコ貰った数の0と1じゃ、

     数値では考えられないほど感覚の隔たりがある。

     その二つの間に宇宙が存在しているくらいの差だな。」


 矢島:「猿が調子乗って、人間語で何か喋ってやがるぞ!」


 上野:「あ、言っておくけど。義理だからね?」


 山路:「え?」


 上野:「まさか、本命だとか思ったりしちゃった?」


 山路:「ばっ・・・・あ、わ、分かってるよ。ソレくらい。オレだって・・・。

     チョコ貰ったからって本命だなんて思ったことねーし。」


 伊藤:「それはそれで、どうかと。」


 矢島:「へへーんだ。義理チョコなんか貰ったって嬉しくないだろー!?

     だったらいらねーよ。本命だけ貰えればそれでいいじゃん!」


 伊藤:「それは、本命が貰える人のセリフじゃないか?」


 山路:「伊藤が言うと、嫌味にしか聞こえないな。」


 伊藤:「そんなつもりは無いんだけど・・・。」


 上野:「矢島は、貰えるんじゃないのぉ~?」


 矢島:「え?」


 山路:「わっと(What)?」


 上野:「じゃあ、私は行くねー。」


 伊藤:「おう。」


 山路:「チョコ、センキュー。」


 矢島:「けっ!」


 上野:「あ、そうそう。

     クラスの女子全員で決めたんだけど、山路がダントツ一位だったよ。」


 山路:「は? ・・・何が?」


 上野:「ソレって、”絶対にチョコが貰えなそうな男子”に

     ボランティアで配ってるヤツだからさ。」


 山路:「・・・えええーーーー!? ・・・・って、どういうこと?」


 矢島:「簡単に言うと、お情けだ。」


 上野:「お返し期待してるからねー!」


 伊藤:「それは、ボランティアって言わないんじゃないのか?」


 山路:「チョコは貰えたけど・・・絶対に貰えなさそうな男子・・・?」


 矢島:「チョコ貰えなかったから、オレは一応、チョコ貰えそうな男子?」


 伊藤:「なんか・・・複雑だな。でもさ、そんな気にするなよ。

     チョコに振り回されるのバカらしいじゃん?

     俺達は俺達らしく楽しく行こうぜ。」


 山路:「伊藤・・・。」


 矢島:「お前、優しいなぁ。

     これ、気持ちなんだけど・・・受け取ってください!」


 山路:「ソレ貰ったヤツだろ!」 

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