第196話 コボルト村急襲4

 洞窟の中に幼女たちを押し込むと、俺は再び扉を閉じるように言った。


 閉じていく扉の向こうから、イリアくんが俺に声を掛けてくる。


「ライラさんは、薬草を取りに大人のコボルトたちと西の森に出掛けてたんだ! いまミリアさんたちが探しに行ってる!」


 さすが!


 もしライラと出会っていなければ、きっとプロポーズしていただろう俺の親友イリアくん!

 

 今の俺が一番気にしていることを理解してくれていた。


「イリアくん、ありがとね!」


 俺はイリアくんに向ってニッカリと笑顔を向けた後、洞窟の扉を押して閉じた。


 背後の足音から、多くの魔族と魔獣が迫っているのを感じる。


 【幼女化】を免れたラミアのトリフィン(青髪金眼青体。Dカップ)が、声を張り上げる。


「ここに皇帝陛下がおられます!」


 おそらく背後には、敵だけではなく、味方もいるのだろう。


 トリフィンの掛け声で、味方はこれから俺がすることを察知して退避するはずだ。


 俺は振り向くと同時に【幼女化】スキルを発動。


「【幼女化ビィィィム】」


 迫りくるゴブリンやオーク、そしてジェヴォーダンにビームを照射していく。


 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 たちまち幼女の群れが出現した。


「五つの村に忠誠を示せ!」


 トリフィンが大声で叫ぶが、幼女の中で敬礼するものはいなかった。どうやら巻き込まれた者はいなかったようだ。


「村の者で巻き込まれた者はいませんでした!」


 【幼女化】を免れたもう一人のラミアであるラモーネ(黒髪青眼黒体。Fカップ)が、俺に向って叫ぶ。


 目の前では、幼女たちが混乱に陥っていた。


 味方には俺の背後に移動するよう伝え、それからゆっくりと洞窟前広場に向って歩き始める。


 燃え盛る村の中を、悠々かつ堂々と歩く俺に気が付いたオーク魔族兵が、こちらに五体のジェボーダンを差し向けてきた。


 ドドドドドッ! ドドドドドッ! ドドドドドッ! ドドドドドッ! ドドドドドッ!


「【幼女化ビィィィム】」


 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 ジェヴォーダンたちが、一瞬で幼女になった。


 洞窟前広場に着いたところで岩トロル二体が、俺たちに気が付いて突進してくる。


 ドシンッ!


 ドシンッ!


 ドシンッ! ドシンッ! ドシンッ! ドシンッ!


「【幼女化ビィィィム】」


 ボンッ! ボンッ!


 二人の幼女が出現した。


 村にいた岩トロルは三体。これで全ての岩トロルが幼女になった。


「タヌァカ皇帝陛下! 洞窟前広場にご到着!」

「シンイチ様が洞窟前広場に到着!」


 二人のラミアが声を張り上げる。


「グギギ!、岩トロルいない! どこいった!?」

「ギギッ!? ナンダアイツラ!?」

「ギャギャッ! ギャギャッ! ガキが一杯いるぞ!」


 周囲で暴れている魔族兵たちが、俺たちの方に注目した。


 俺たちの周囲には、髪を振り乱して暴れる幼女たちで溢れていた。


 魔獣ジェヴォーダンが、幼女たちを襲いに向かってくる。

 

「ぐもぉぉぉおおお!」


 その後ろから、ゴブリンとオークの魔族兵が追ってきた。


 それだけではない。


 魔族や魔獣と戦っていたコボルト村の住人たちも、俺を目指して駆け寄ってくる。


 俺は腕を十字に組んで叫び始める。


「【幼女化ぁぁぁぁああああああ】」


 そこで言葉を伸ばすと、こちらに駆け寄っていたコボルト村の住人たちが、一斉に地面に伏せた。もちろん、彼らは俺が何をするの分かっているのだ。


「【ビィィィィィィィィィィィイム】!」


 ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 幼女を蹂躙するつもりが、途中で俺の絶叫に気付いて向ってた魔獣ジェヴォーダンたちが、一瞬で幼女となった。


 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 その後ろから追ってきていた、ゴブリンとオークの魔族兵たちが幼女になった。


 途中で転んだり、遅れて到着したりして【幼女化】を逃れた魔族兵は、突然、目の前から仲間が消えてしまったことに呆然としている。


 そこを地面に伏せていたコボルト村の住人が、剣や槍で必殺の一撃を繰り出し、次々と魔族兵たちを倒して行った。


 こうしたことが数度、繰り返された後、


「ギギギッ! ま、魔法使いだ! 魔法使いがいるぞ!」

「グギギ!、た、退却、退却だぁぁぁあ!」


 魔族兵たちの突進が止まり、彼らはそのまま転進して逃げ出していった。


 洞窟前広場は幼女で溢れかえっている。


 村の住人は、トリフィンとラモーネの指示に従って、幼女になったものや怪我を負った者は洞窟へ、まだ戦える者は村の生存者の捜索に向かった。


「誰か! ライラの居場所を知らないか!」


 俺の前に幼女が一人進み出る。名を尋ねると知っているコボルトだった。


「シンイチ様、ライラ様は、銀の泉に行くとおっしゃっていました。ミリア様たちもライラ様の救出に西の森に向われているはずです」


 銀の泉……何度か一緒に行ったことがある場所だ。


「ドラゴンシスターズの者はいるか!」


 俺が声を張り上げると、背後に気配があったので振り返ると、フードを被った女性が立っていた。


「陛下、こちらに」


「幼女たちの始末を頼む。くれぐれも身内を見間違えるなよ。魔獣と岩トロルは判明次第即処分、ゴブリンやオークはお前たちの判断に任せる」


「御意!」


「トリフィン、ラモーネ、西の森に行く! 俺を運んでくれ」


「「はい!」」


 身体がフワッと持ち上げられ、お姫様抱っこ状態になる。

 

 そのまま俺たちは暗い森の中へと入って行った。


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