第187話 イリアくんの太もも

 早朝のコボルト村。


 洞窟前広場には、幼女化体操に参加しようと、コボルト村の住人がずらりと並んでいた。


 もちろんその中には、マーカスとヴィルのハーレムメンバーもいる。


 もちろん彼女たちは、幼女化体操がしたくて参加しているわけではない。俺のスタンプ特典を狙っているのだ。


 まだ眠気まなこの女神官カレンが、俺の前に並びながら、ぼそっと呟く。


「ねぇ、シンイチ……できれば体操の時間はお昼以降にしてもらえないかしら?」


 ジャージ姿のカレンの胸元は、パッツンパッツンに膨らんでいて、とてもエロい。エロいが、なんだかマーカスに悪い気がするので、チラ見するのに止めておく。


 カレンの言葉にうなずきながら、エルザが身体を思い切り伸ばしていた。都条例もそろそろ卒業しつつある彼女だが、胸のサイズは並盛のままだ。だが身体が細身なだけに、その存在感はとても大きい。


 とても、大きい。


「シンイチィ……私たちの胸ばっかり見てないで、さっさと始めなさいよ! ライラに言いつけるわよ! まったく! これだからDTは……」


 酷い……。


 ヴィルのハーレムメンバーである、ミモザとミッシールは、大人しく整列して体操が始まるのを待っていた。


 彼女たちもスタンプ目当てなのは変わりないのだが、どちらかというと幼女化体操の後に配られる、ネットスーパーのお菓子が目当てのようだ。


 コボルト村では参加人数2~30人が多くない。まぁ、グレイベア村と地下帝国と比べてそもそも人口が少ないので、それは仕方ないことだ。


 最近はコボルト村に戻る機会が減っていることもあって、ここで早朝の幼女化体操をしたときには、参加者にお菓子を配るようにしている。


「早くしてよシンイチ! お腹空いてきたじゃない」


「シンイチ! 早くしろ! お菓子! お菓子!」


 ミモザとミッシールが、俺を急かしてくる。


 それにしても、マーカスとヴィルのハーレムメンバーどもは、相変わらず俺のこと呼び捨てだよ。


 まぁ、別にいいんだけどさ。


 ただ、この四人の呼び捨ての語尾には「このDT!」って文字がくっついてるのが、目に見えてるんだよ。


「はいはい。それじゃ、みんなー! 幼女化体操、始めるよーっ!」

 

「「「はー--い!」」」


「【幼女化ビィィィム】!」


 こうして幼女化体操は無事に終了した。


「シンイチくん、おはよー!」


 体操が終わって、全員にスタンプを押し終えた頃、銀髪ポニーテイルの美少女が俺の下に走ってきた。


「あぁ、イリアくん、おはよー!」


「はぁ、はぁ、幼女化体操終わっちゃったんだね。残念!」


 緑色の瞳を輝かせ、俺に優しい微笑を投げかけるイリアくん。相変わらずの美少女(風味)である。


 身体を前に倒してて、息を弾ませるイリアくんの胸元に、自然と視線が奪われる。


 イリアきゅんの生乳……これは脳内録画するしかない!


「イリアの胸を覗くとか、ほんと見境ないにも程があるわよ! まぁ、そういうの嫌いじゃないけど」※カレン

「ちょっと、エロシンイチ! おっぱいばっかり見てないで、さっさとお菓子配りなさいよ!」※エルザ

「シンイチ! お菓子!」※ミモザ

「お菓子出せ! シンイチ!」※ミッシール


 ほんと、


 まじで、


 ハーレムメンバーというのはクソである。


 と思いつつも、俺は体操に参加してくれた幼女たちに、お菓子を配り始める。


 イリアくんが、俺の隣に並んで、お菓子を配る手伝いをしてくれている。


 本当にええ娘や。


 もし、ライラという女神が俺の前に現れなかったら、俺は間違いなくイリアくんにプロポーズしていたことだろう。


 ちなみに、イリアくんには双子の姉イリアーナがいる。見た目はそっくりだが、サキュバスのイリアーナは、見事な巨乳の持ち主である。 


 だが、もし二人のうちでどちらかを選べと言われれば、俺は迷うことなくイリアくんを選ぶだろう。


 イリアーナは、出会った当初こそ、サキュバスの能力を全開で俺を誘惑し続けていた。


 だが、俺がドラゴンの婿であることを知ると、途端に怯えるようになり、俺から距離を取るようになってしまった。


 イリアくんも、俺がドラゴンの婿になったことを知ったときには、気絶せんばかりに驚いてはいた。だがその後はいつもと変わらず、俺と接してくれている。


 インキュバスなイリアくんの無自覚な誘惑は続いているものの、それでも俺とは大切な男友達でいてくれているのだ。


 大切な……男友達。


 俺はお菓子を配るイリアくんの後ろ姿を見て考え込んでいた。


 短パンの下に見える綺麗な太ももが、とても美味しそうだ。


 あの真っ白で柔らかそうで、思わず頬ずりしたくなるような太ももが、果たして男のものだというのだろうか。


 そんなはずはない!


 そうだ! 舐めてみたら分かるんじゃないかな?


 そう思った俺は、思わずイリアくんの太ももに顔を近づけようと……


「シンイチさま!」


「ケバブッ!?」


 突然、後ろから声を掛けられる。


 振り返るとそこには、ライラの姿があった。


「ライラ!? どうしてここに?」

 

「あっ、はい。えっと、薬草の採取に。本当は明日だったんですけど、シンイチさまがいらっしゃるので一日繰り上げました」


「そ、そう……」


 ライラは、俺の前でお菓子を配り続けているイリアくんを見て、次にイリアくんの太ももを見て、そして最後に俺の顔を見て言った。


「どうぞ!」


 ライラの手がイリアくんの太ももに向けられる。


 一体何が「どうぞ」なのか分からない。


 というか、分かりたくなかった。


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