第186話 幼女化体操
早朝の地下帝国第三階層。
深い階層まで続く巨大な縦穴から空の光が入ってくるため、この階層であっても昼夜の区別はつく。やや冷たい空気が降りてくることもあって、早朝の地下帝国はとても爽やかな雰囲気だ。
第三階層にある大広場には100名以上のグレイベア村と地下帝国の住人が並んでいた。
「みなさん、おはよーございまーす!」
「「「皇帝陛下、おはようございまーす!」」」
俺の前にずらりと並んだ住人たちが、元気よく挨拶を返してくれた。
小さい獣人の子供から大きなミノタウロスまで、老若男女、種族様々な住人たちが、この早朝の「幼女化体操」に参加してくれている。
「それじゃ【幼女化】行きまーす!」
「「「お願いしまーす!」」」
「【幼女化ビーィィィム】(意識そのまま:継続2時間)」
俺は広場にいる全員に丁寧にビームを照射して行った。
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
たちまち広場が幼女が出現した。
「それじゃ、幼女化体操行きまーす! ちゃーん、ちゃ、ちゃ、ちゃちゃちゃ……」
俺の掛け声に合わせて100名以上の幼女たちが、元気よく幼女化体操を始めた。
これは俺が地下帝国滞在中に行われる日課の一つである。
その一番の目的は【幼女化】スキルのレベルアップだ。現在のスキルレベルは8。レベル9まであと一歩なのだが、その道程は長い。
(ココロ:スキルレベル9まで、あと6万回【幼女化】が必要になります)
(おうふ! まだそんなに必要なのか。転生してから4年以上、毎日のように【幼女化】を使い続けてきたというのに……)
(シリル:とはいえ、このまま毎朝の幼女化体操を続けていけば、二年も掛らず達成できるじゃないですか)
(まぁ、そうだよね。焦らず、根気よく行くしかないな)
俺が【幼女化】スキルレベル9に拘る理由は、【幼女化】の解除ができるようになるからだ。正直、解除さえできるようになれば、それ以上スキルレベルを上げる必要はないとも思ってる。
以前、コカトリアンと戦ったとき、彼らを【幼女化】して倒したことがある。正確に言うと、幼女になった彼らは、自分たちが吐いた毒霧によって死亡した。
彼らが死んだ後、その姿は元のコカトリアンに戻ることなく幼女のままだった。【幼女化】というのは対象の生死を問わず、効果時間が過ぎるまで幼女の姿のままなのだ。
その時のトラウマもあって、俺は何としても【幼女化】の解除が使えるようになりたい。
【幼女化】の効果継続時間を短く設定することでも、解除のタイミングをある程度コントロールすることはできる。
だが自分の望んだ任意のタイミングで解除できるのとは全く違う。後になって状況が変わったから、効果時間を変更するなんてことはできない。
スキルレベル9の解除であれば、いつでも解除できる。この安心感が得られるだけでも、俺にとってはかなり大きなことなのだ。
などと考えている内に幼女化体操が終了した。
「はーい! お疲れ様でした! それじゃ、幼女スタンプを押していきまーす!」
俺の言葉を聞いて、幼女たちが俺の前に列を作る。
幼女スタンプは、毎朝の幼女化体操に参加する度にひとつ押される。スタンプを100個集めると、俺がネットスーパーで本人が望むものをひとつ何でも買ってあげるという特典があるのだ。
住人たちの主な目的は、このスタンプ特典なのだが、それ以外にも幼女になるメリットを彼らなりに見つけているようだった。
「ミノちゃん、この後、一緒に朝食にしない?」
「うん! ルルゥちゃん、行こう行こう!」
地下帝国の食堂は、種族や身体のサイズ、食材の内容とから、いくつかに分かれている。そのため、例えばミノタウロス族とホビット族が同じ食堂を利用することはまずない。
もし一緒に食事をしようとすれば、この広場のような場所で食べるしかない。
だが【幼女化】で幼女になっていれば、種族も体のサイズも問題ない。もちろん同じ幼女なので、同じ食材を楽しむことができるというわけだ。
特に魔族は、人や亜人と違って【幼女化】されることに対する忌避感がないように思える。
魔族の一人に聞いたところ、この地下帝国という安全が保証された場所でのことならば、【幼女化】はとても楽しいものだということだった。
種族を越えた恋に落ちたサイクロプスとハーピーの少女が、俺に最大効果時間の【幼女化】を依頼してきたこともある。
さすがにそれは断ったが、彼らには一週間ごとに丸一日の【幼女化】をしてあげている。
魔族と獣人のカップルが、幼女になって手をつないで歩いている姿を見ると、なんだかとても微笑ましく感じる。
こういうこともあって、今では魔族の住人たちの方から、積極的に【幼女化】されるのを望む者も増えて来た。
コボルト村時代は、いちいち頭を下げて【幼女化】させてくれるようお願いしていたことと比べると、今はかなり良い状況になっている。
あの頃は、マーカスのハーレムメンバーであるカレンやエルザ、ヴィルのハーレムメンバーであるミモザやミッシールは、毎回毎回、嫌な顔してくれてたな。
あっ、なんだか当時のことを思い出したら腹が立ってきたぞ。
「ライラ、ちょっとコボルト村に行ってくる!」
「えっ!? い、今からですか!?」
「ちょっとした用があってね。明日には戻るから! ライラは研究頑張って!」
俺は間もなく夕方になろうというグレイベア村を後に、馬を駆ってコボルト村へと向かった。
久しぶりに、コボルト村にいるマーカスとヴィルのハーレムメンバーの顔を見るために。
明日の朝、コボルト村でみんなで幼女化体操をするために!
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