第171話 ライラニウムの補給
リーコス村から戻った俺は、ライラが今グレイベア村にいないことを知って愕然とした。
「ええぇぇ! ライラいないの!? どこ!? ライラはどこ!?」
恐らく血走っているであろう俺の目を見て、出迎えに来ていたルカが慌てて答える。
「今はコボルト村じゃ、商品研究で必要な薬草を取りに行っておる」
「わかった!」
俺はリーコス村から乗って来た馬をグレイベア村の馬屋に預け、別の馬に飛び乗ると、そのまま一人でコボルト村へと駆けて行った。
何だか後方で、ルカの声が聞こえていたが、とりあえず後のことはフワデラ夫妻に任せておけばいいだろう。いいはずだ。
いつもの半分の時間で、俺はコボルト村へ到着。
馬に乗ったまま、ゴブリン洞窟の前に乗り付けると、見知ったコボルトに声を掛ける。
「ライラは居る?」
コボルトは首を横に振った。
「ライラ様、いま、試験、農園に……」
「わかった! ありがとう!」
俺はコボルトの言葉を最後まで待たず、馬を返して試験農園へ向った。
「ライラー! ライラー!」
試験農園についた俺は、馬から降りてライラの名前を大声で叫ぶ。
「シンイチさまー!」
女神が……
女神が俺に気付いて大きく手を振っていた。
「ライラぁぁぁ!」
薬草を収穫中だったライラは、近づいてくる俺を出迎えようと、服についた土を払っていた。
ガシッ!
「きゃっ!」
俺はライラをお姫様抱っこして、そのまま身体を反転して駈け出した。
「「えぇ!?」」
試験農園にいた獣人たちのほとんどが、突然の俺の行動に驚いていた。
だが昔からコボルト村に住んでいる獣人は、俺の行動を理解しており、特に驚くこともなく作業を続けていた。
「シンイチさま!?」
「……」※俺、沈黙。
困惑するライラを腕に抱きかかえたまま、俺は試験農園を出て、洞窟前広場を抜け、ゴブリン洞窟に入り、そして俺とライラの最奥部屋に突入した。
部屋の扉を空ける直前、足技で表の看板を裏返すのを忘れない。
『ただいま交尾中、何人たりとも立ち入るべからず』
俺たちが中に入って扉を閉じると、
カランッ!
看板がひっくり返って扉にぶつかる音がした。
「シ、シンイチさま、わ、わたし汗を掻いてて……その……先に身体に水浴びを……」
問題ない! ちゃんと湯の入った桶と綺麗なタオルが置かれている!
普段からちゃんと四畳半の畳部屋に布団を敷いてくれているだけでなく、先程、俺が洞窟前でライラを探しているのを見ただけで、お湯まで準備してくれている。この気遣い……間違いなくロコの配慮に違いない。ロコが直接用意してくれたのか、村人の誰かがロコの言いつけを守っただけなのかわからないが、とにかくさすがはコボルト村だ。あとでちゃんと礼を言わないとな。
「シンイチさま! わたし、その汗が……その……」
「OK! 俺も汗かいてるから一緒に洗いっこしよう!」
そう言いつつ、俺はライラの服を脱がして、お湯を絞ったタオルで、その美しい身体を拭い始めた。
「えっ、あっ、先にわたしが……」
「大丈夫、大丈夫……」
何が大丈夫かわからないが、とにかく優しく丁寧に細やかに、ライラの身体を綺麗に拭っていった。
ライラを隅から隅々まで綺麗にした後、今度は自分の身体を……拭おうとしたらライラにタオルを取り上げられた。
そして天国の時間が過ぎ……
お互いにサッパリした後、俺はライラを力一杯抱き締めて、その首元に顔を埋めた。
「シンイチ様……おかえりなさいませ」
ライラが俺の頭を優しく撫でてくれた。
そして今度は、ライラの方から優しくキスをしてくれた。
それからしばらくの間、ライラと視線を交わしているうちに、
いつの間にか、俺の中にあった恐怖は完全に消えてしまった。
そして――
それから3時間後、疲労に襲われた俺は泥のように眠った。
~ 落ち着いた ~
翌朝、目覚めると、俺の隣ではライラが可愛い寝息を立てて眠っていた。
起こしちゃいけないと思いつつ、ライラの寝顔を見ているうちに堪えきれなくなり、
その白くて柔らかい頬にそっとキスをした。
するとさらに堪えらなくなり、
ついにライラの桜色の唇を堪能し始めた。
「!?」※ライラ
やはりというか、当然、ライラが目を覚ましてしまった。
まぁ、だからといって唇弄りを止めるつもりはないけどな。
そのうち、俺のエクスカリバーがムクムクしてきて――
「ふぉぉぉぉぉお、ライラぁぁぁぁぁああ!」
そして朝の夫婦合体が始まり――
それはお昼過ぎまで続いた。
ここまで来て、ようやく俺の中のライラニウムの充填が完了。
ライラ飢餓状態から回復した俺は、ようやくライラ以外のこともちょっとだけ考えられる通常モードへと戻ることができた。
ふぅ。
やはり俺にとって、ライラの補給は最優先事項だったようだ。
今回はそれを実感することができたな。
ん?
そういえば、どうして俺はコボルト村にいるんだっけ?
後でルカに怒鳴られるようなイメージが脳裏をよぎったが、
とりあえず俺は考えるのを止めた。
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