第145話 イリアズホットドック

 グレイベア村は、元々グレイちゃんが本来の姿で住んでいた洞窟に、ドラゴンが住み着いたことから始まった。グレイベアとドラゴンの両方を幼女化して以降、この洞窟を中心に村が発展していくことになる。


 村は全部で四つの区画に分かれている。村長宅(兼旅館)がある北区画と南区画は、いわばメインストリートで、多くの魔族や獣人が住み、また村の主要な施設が集まっている。


 西区画には湖に繋がる川があり、リザードマンや河甲羅族のような水棲種族が住んでいる。東区画は深い森へと繋がっており、エルフやドライアド族等の居住区だ。


 地下や暗い場所を好む種族は、ドラゴン洞窟の地下に広がる地下帝国で暮らしている。


 今では、コボルト村を遥かに凌ぐ近代化が達成されている。もし帝国から来た転生者が、この村を訪れたとしたら、まるで帝国の地方にある片田舎の街のように錯覚するかもしれない。


 まぁ、魔族がひとりも歩いていなければということが前提だけど。


 近代化というのも大袈裟だけど、まず夜になってもソーラーランタンによる灯りがあるため、もしマーカスのパブで酔っぱらったとしても、歩いて帰ることができる。道は殆どが石畳で舗装されているので、泥や轍に足を取られるようなこともない。


 村には現在、ママチャリが8台、マウンテンバイクが2台ある。購入の際は一台ずつ、買い物カゴ3つとココロチンとシリルっちのカゴも借りて、そこに無理やり乗せた上で注文を通してもらった。


 現在、これらは村の物流と通信に大きな役割を果たしてくれている。大きなリュックを背負って自転車で村を疾走するリザード便は、今や村の風物詩となっていた。


「チーッス! リザード・イーツです! 皇帝! 皇妃! イリアズホットドックお届けッス!」


 リザード便が最近スタートした出前配達サービスを利用して、俺は村長宅(兼旅館)にある自分たちの部屋に昼食を届けてもらった。


 リザードマンの青年が、俺にホットドックの入った紙袋を手渡しながら、この新製品について説明する。届る製品の宣伝をするのもサービスのひとつらしい。


「店長が皇帝のために心を込めて作ったイリアズホットドック! イリアさんのソーセージっす! すっごく大きいっすよ! このイリアさんのソーセージ!」


「もしかしてわざと言ってる!?」


 やたらソーセージを強調するリザードマンの青年は、カラカラと笑いながら去って行った。


 そして、ホットドックに乗せられていたソーセージは、すごく大きかったよ。


「もぐもぐ……これ、とてもおいしいですね」


 ライラが、ホットドックを頬張りながら言う。


「ガリッ!」

 

 ライラがイリアズソーセージを、爽快な音を立てて噛み切ったとき、


「ヒッ!?」


 ってなった。


 噛み切られたのはイリアズソーセージであって、俺のソーセージじゃないんだけど……怖かった。


「それでライラ、シュモネーさんの出産は無事に終わったの?」


「はい。カワイイ双子が生まれましたよ。男の子と女の子です」


「ほへぇ……。それでフワデラさんとシュモネーさんは、今どうしてるの?」


「お二人ともご自宅でお休みになられています」


「そっか。お祝いは日を改めた方がいいかな」


「そうですね」


 俺がコボルト村の視察に向っている間、ライラは出産間近なシュモネーの身の回りの世話をしていた。お産の時も、ずっと付きっ切りだったらしい。


 ライラは顔には一切出さないけれど、かなり疲れているはずだ。


 つまり、ここはライラにマッサージして癒してあげるべきときではないか? そうに違いない!


 俺はいそいそと布団を敷いて、その上をポンポンと叩く。


「ライラ、ここに横になって! うつ伏せになって!」


「は、はい!? こ、こうですか?」


 ライラが布団の上にうつ伏せになる。


 Tシャツにジーンズのホットパンツ姿のライラが、うつ伏せになる。


 それはもう見事な桃尻だった。


 なんという! なんという! なんという! カワイイお尻!


 そそそ、それに、ふふ、ふとふとふともも、ライラの真っ白なふともも、ハァハァ。


 いやいやいやいや! 今は疲れているライラを癒す場面! 癒す場面だった!


「お疲れだったねライラ……」


 俺は下心が着火するのを避けるため、ライラの足裏からマッサージを始める。


 ぐぃっ! ぐぃっ! ぐぃっ!


 と足つぼを強く推す度に、


 んっ! あっ! あっ!


 と、ライラの声が……本人にはその気がなくとも、俺を刺激する声が漏れる。


 いやいやいやいや! 今は疲れているライラを癒す場面! 癒す場面なのだ!


 そうだ首! 首周りなら! それほど下半身にダメージが入ることなく、純粋な心でライラをマッサージすることができる!


 それならできる! 俺はできる子だから!


 首回りをマッサージすると、ライラは気持ちよさそうにうっとりとしている。


「はぁ……シンイチさま……気持ちいいです……」


 ライラが心地良くなっていることに気を良くした俺は、そのまま背中と腰をもみほぐしていく。


 だが……


 それは……


 マッサージが桃尻に移ったことで一気に崩壊してしまった。


 うぉぉぉぉ! ライラの桃尻ぃぃぃぃ!


 桃尻を堪能し尽くした俺は、そのままライラを裏返し……


「うぉぉぉぉ! ライラぁぁぁ、たまらんー--!」


「きゃっ❤ シンイチさま❤」


 そこから三時間、ライラを散々疲れさせた後、


 二人して泥のように眠った。


 俺は……俺は駄目な人間だぁ。


 だが反省はしない!

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