第110話 イザ! 王都へ!

 翌早朝、宿屋の前に幌付きの馬車が到着した。


 御者台に乗っているのはライラとカレンだ。


「シンイチさま、おはようございます」

「おはよう、シンイチ。これから王都に立つのよね?」


 ライラが来ることは予想していたが、まさかカレンまで一緒に来るとは思わなかった。


「私って王都出身なのよね。だからステファンからシンイチたちの面倒を見る様に頼まれたってわけ」


 ふふんっと胸を張るカレンの巨乳がプルンと揺れる。昔はあれを脳内録画してお世話になっていたものだが、以前ほど魅力を感じることはなかった。


 何と言っても、今の俺は至高のおっぱいをいつでも好き放題できるからな!


 でもまぁ、おっぱいはおっぱいなので、脳内録画スイッチはオンにしておく。


 カレンの同行は、おっぱい要員というよりもラーナリア正教の神官として、とてもありがたかった。セレーナを牽制するのに、彼女ほど適した人材はいないだろう。


「カレンが一緒に来てくれるのか。そいつは頼もしいや。王都での案内よろしくね」


「大体のいきさつは聞いてるけど……」


 カレンの視線が俺の背後へと向けられる。


 振り返ると、セレーナとタクスが宿から出て来たところだった。


 俺はセレーナに、ライラとカレンを紹介する。一応、二人については俺のパーティメンバーということで説明しておいた。


「クエストの詳しい話は移動しながらすることにして、取り急ぎバーグに向かことにしよう。必要なものもそこで調達だ。それでいいか?」


 俺がセレーナに尋ねると、彼女は頷いた。一応、セレーナはクエスト発注者なので、行動については都度確認をするが、あくまで主導権はこちらが取るようにする。


「なら今すぐ出発だ!」


 こうして俺たちはミチノエキ村を出発した。


 バーグの街へ向う間、クエストについて皆に詳細を説明する。ライラとカレンが、ウィンドルフィンからどこまで話を聞いているのかは知らないが、セレーナに対して警戒心を持っていることは、その表情から伝わってきた。


 コボルト村とグレイベア村については「外部に対して隠す」というのが俺たちの元々の方針ではあるのだが、会話の中で、俺が頑なに村のことを話さないのを、二人はちゃんと気が付いてくれたようだ。


「なるほど皆さんは、あのミチノエキ村でタヌァカ殿と出会ってパーティを組んだのね」


「そうよ。最初に出会ったのは、あなたと同じあの食堂だったわ。私の胸をジロジロと見てくるDTがいるかと思ったら、それがシンイチだったのよ」


 カレンの話をセレーナは素直に信じているようだった。


 というかカレン! いちいち余計な嘘を挟むんじゃない!


 ……いや、まぁ、その、完全に嘘かと言えばそうではなくて、確かにそういう行為が確認された事実はあったかも、というかあったのは仕方ないじゃない!


 だってその時の俺はDTだったんだもの!


「それでセレーナさんは、シャトラン・ヴァルキリーに入りたいってことなの?」


「えぇ、女冒険者として名を上げるには一番堅実な方法かなと思っています。将来的には独立してギルドを作りたいのですが、そのときのための実績のひとつにしようと考えています」


 ラーナリア正教の神官であるカレンに対しては、セレーナは丁寧な言葉遣いで応対していた。俺との会話においては噴き出してくる、狂気もかなり抑えられている感じがする。


 やはり神官という存在は、いや、神官かつ巨乳なカレンは、セレーナを抑えるのに向いているようだ。


「つまり箔を付けたいってことなのね」


「正直に言うのであれば、その通りです」


「なら、さっさと箔を付けたらすぐに辞めることね。ヴァルキリーといえば華々しいイメージを持っている人が多いけど、本当は碌でもないから」


「色々と噂は聞いています。私も深入りするつもりはありません。入団できればそれでも十分です」


 ふむ。ハーレム・クランなんて作る奴も群がる連中も、どうせ碌なもんじゃないってことは、一応セレーナもわかっているみたいだ。


「色々な噂ってなんですか?」


 カレンとセレーナの会話に割り込んできたライラに、カレンが答える。


「ほんと色々よ。まずクランのトップにいるヴァルキリー12は全員シャトランの情婦って言われてるわ」


 なんだと羨ましいなコンチクショー!


 そんなハーレムは、異世界転生した俺にこそあるべきものだろうが!


(ココロチン! ココロチン! やっぱりキモヲタにクレーム入れる! 異世界ハーレム不良品クレーム入れさせてくれ!)


(ココロチン:うるさいですね! いまエルデン攻略で忙しいんです! 邪魔しないでください!)


(えっ!? それって遊んでるだけじゃないの?)


(ココロチン:本気で攻略してますよ! 遊びなわけないじゃないんですか!)


(えぇぇ!? なんで俺怒られてるの!? シリルっち! 助けてシリルっちぃぃ!)


(シリル:申し訳ありません。協力プレイでビジーなう)


 駄目だこの駄精霊ども、まったく使えねぇ。


 まあいい。


 どうせ俺にはハーレムなんて手に入らないんだろ!


 わかったよ。


 わかった!


 ハーレムが手に入らないなら、壊してしまえばいいじゃない!


 シャトラン・ヴァルキリー?


 団長以外は女だけのハーレムクラン?


 くくく!

  

 全部壊してやる! 全員幼女にしてやんよぉぉぉ!


 などと――


 そんな妄想で心を癒す俺だった。

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