第12話 女体化と巨乳化
コボルト掃討クエストに必要な装備や道具を揃える必要があったので、ナイクラ村へ出発するのは2日後ということになった。
マーカスのおっさんとヴィルが買い出しに出かけている間、俺は冒険者ギルドにある
エルフ男の体術は、彼の生まれ故郷であるツェーリンの森に住むエルフたちが好んで使う武術らしい。俺自身は武術の経験がないが、たぶん合気道に近いものだと思う。
ドンッ!
「痛ぅ!」
エルフ男に投げられた俺は軽く中を舞って地面に叩きつけられた。今のところエルフ男の指導は体力作り・受け身・体裁きの3つだけ。
地面に叩きつけられはしたものの、きちんと受け身が取れたのでさしたるダメージはない。
俺が立ち上がったところへ、エルフ男の木剣が俺の頭上目がけて振り下ろされる。
俺はスッと身体を横に引いてこれを躱した。
「いいぞ!」
木剣を華麗に
といっても、これは決まりきった型の動きでしかなく、実は木剣の振り下ろされる位置もタイミングも決まっているんだな。
それでも最初の頃、ただボコボコにされていた状態から比べたら大した進歩なんだだよ。俺は俺を褒めてあげたい。えらいぞ俺! かっこいいぞ俺!
それにしても……。
「だいぶ動きが良くなった! この調子で続けて行けばマーカスだって投げられるかもしれない」
「ホント?」
「まぁ、彼が酒に酔い潰れていたら……だけどね」
「なっ!?」
エルフ男がニヤリとイケメンスマイルを俺に向ける。ナイスジョークだったろ?というドヤ顔が腹立たしい。
というか憎たらしいぃぃ! キィィィ!
いや、エルフ男のことは嫌いじゃないよ? これまで短い期間だったけど色々と世話になったし、人柄も大分わかってきている。こいつは気高さと正義感と優しさを持ち合わせている凄く良い奴だ。
ただ……
イケメンなのだ。それが俺のエルフ男に対する全ての評価をリバースさせていた。
俺はイケメンが嫌いなんだよぉ!
エルフ男が俺の肩をポンポンと叩いたその腕に手を当てて叫ぶ!
「【女体化】ぁぁ」
「なっ!?」
ボンッと音がして煙が上がる。煙はすぐに消えて中に立っている人の姿が露わになった。
≫ ネフュー・シンダリンを女体化しました。残り時間 01:58:57
≫ EONポイントを70獲得しました。
腰まで届く黒い黒髪。透き通るような白い肌。すらりとスレンダーな長身と長い脚。そこには
「ちょ、ちょっと! 何するのよ!」
はわっ!と声を挙げて
「【巨乳化】」
俺がボソッと呟くと、
≫ ネフュー・シンダリンを巨乳化しました。残り時間 01:58:57
≫ EONポイントを70獲得しました。
「おうふっ」
俺は思わず股間を抑えて前屈み姿勢を取る。女神化したネフュー様は、それはもうエロ美しかった。
「ね、ねぇ! ちゃんと元に戻るんでしょうね!?」
「あと2時間で戻るみたい」
「2時間も!?」
困惑するネフュー様に、俺は両手をワキワキしながらゆっくりと近づいて行った。
「ぬふふ。さぁネフュー先生、体術の訓練を続けようではありませんか」
「ちょ、ちょっと待てシンイチ。その手の動きはやめて! 目が気持ち悪いから! 近づかないで!」
ネフュー様がはだけた胸元を両手で隠しながら後ずさりする。
「ぬっほほーーーい!」
奇声を上げて俺が走り寄ると、ネフュー女神様は全力で逃げ出した。
二時間後。
「何やってんだお前ら?」
「兄ちゃん! ネフューの兄ちゃんも、大丈夫か!?」
マーカスのおっさんとヴィルが、疲れ果てて地面に倒れ込んでいる俺とエルフ男を見て驚く。
俺はなんとか親指を立てて生きていることをアピールした。
~ 宿屋の食堂 ~
「なるほど。そりゃ災難だったな」
「オレ、ネフューの姉ちゃん見て見たかったな!」
俺たちは宿屋の食堂に集まって昼間の出来事を話した。
「いいか、二度としないでくれ」
エルフ男が俺の目を睨みつけて言った。怒りを含んだ声に場の空気が重くなる。よっぽど嫌だったんだな。まぁ、当然か。悪いことをした。
「すまなかった。謝る。もう二度としない」
俺は席を立ってエルフ男に向かって頭を下げた。
無理やりよくない。それは俺がこの世界に飛ばされて一番最初に学んだことのはずだった。
俺の本気の謝罪に逆にエルフ男が戸惑っていたが、俺はずっとそのまま頭を下げ続けた。
「わ、わかった。謝罪は十分に受けたから頭を上げてくれ」
「よし! 坊主は謝ったしネフューも受け入れた。これでケジメはついた。さぁメシにしようや!」
俺は恐る恐る頭を上げた。
「オレお腹空いたー!」
最後にヴィルの一声が場の重い空気を吹き飛ばしてくれたおかげで、俺たちはいつものように食事を始めることができたのだった。
「それにしても女体化と巨乳化か、凄いのか凄くないのか、坊主のスキルってのは何とも……」
「でもネフューの兄ちゃん、美人になれたんだろ! 」
「まぁ、ネフューは元々イケメンだし」
ヴィルの無邪気な質問に、俺はまたネフューのトラウマを刺激しないかと内心ひやひやしながら答えた。
「あんな経験は二度とごめんだけど、おかげで女性の感じる恐怖が理解できたよ」
「ご、ごめんなさい」
俺は慌てて頭を下げる。
「いや責めてるわけじゃないよ。学ぶこともあったということさ」
ネフューのフォローに続けて、マーカスが俺に向ってニッと口角を広げて話しかけてくる。
「だが巨乳化は使いどころがあるんじゃねーか? ギルドのねーちゃんとかさ」
「ぺったんこだもんな!」
「おい! そんなことギルドで口にするんじゃねーぞ!」
俺が敢えて大げさに「プッ」と噴き出すと、それに釣られたようにみんなも大きな声で笑った。
いつの間にかもやもや空気は完全に消えてしまっていた。
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