第11話 おっさんの策略
「早速、ヴィルに【幼女化】を試してみたいんだけど、いいかな?」
「いいよー!」
俺は白狼族の亜人種であるヴィルに【幼女化】が使えるようになるのかを試してみる。
「イェスロリータ」
ヴィルの頭に手を乗せてつぶやくと無事【幼女化】することができた。
ケモミミ尻尾モフモフの幼女ヴィルちゃんは……天使だったよ。
「可愛いなー、もうずっとこのままでいいんじゃないかな?」
「おいおい坊主、そりゃあんまりだぜ。まぁ確かにカワイイけどよ」
「本人に聞いてみれば良いのでは?」
そういえば【幼女化】しても意識が維持できるんだったか。
「ヴィル、どうするずっと幼女のままでいい? それともこのままがいい?」
「んーっ? お腹すいたー!」
「あれ?」
「なんか前と変わってなさそうだが……」
(どゆこと? ココロチン?)
(【幼女化】を発動する際にオプション指定しないとデフォルト設定が適用されることになります)
(オプション指定? それってどうすればいいの?)
ココロにオプション指定の説明を聞いた俺は、幼女化した後でも意識が継続するように設定した。
「というわけで大人の皆さん、どちらかが実験台になってください」
俺は早速【幼女化】(意識継続)を試すことにする。
大人二人は目を合わせ、視線でお互いに実験役を押し付け合っていたが、最終的にマーカスのおっさんが折れた。
「いいよ。じゃ、俺にやってくれ」
「では……」
おっさんの肩に手を置いて
「イェスロリータ(意識継続)」
と呟くと、一瞬でおっさんがマーカスちゃんに変化する。
「どう?」
「マーカス、意識はあるのか?」
マーカスちゃんは自分の小さい手を見て驚き、続いて俺とネフューを見て驚きながら叫んだ。
「おお! 俺の身体がちっさい! お前らがでかい!」
どうやら成功したようだった。
~ 宿の食堂 ~
ヴィルとマーカスはその日一日ずっと幼女のままだった。
「そういや、次のレベル4にならないと継続時間は変えられないんだった」
「一日ずっと幼女ってのは難儀なもんだな。なんせ酒がマズイ。子ども舌ってことなんだろうな」
マーカスちゃんが可愛い声で話しながら、エールの入ったジョッキをちびちびと啜る。
「レベル4には通算100体の【幼女化】が必要だから、もうあと50回だね」
「ゴブリンやコボルトの討伐クエストを受注すれば数をこなすのは難しくない。当面はぼくとマーカスで制圧するから、シンイチはその後ゆっくり【幼女化】を掛けるといい」
色々と言ってるエルフ男の目がこれ以上【幼女化】されるのは御免だと訴えていた。
「んー。コボルトの集落かゴブリンの穴倉を見つけることができりゃ、50体くらいなんとかなるだろ。うぅ、酒が苦ぇぇ」
「そうですね。ゴブリンを何体か捉えて繰り返し【幼女化】すれば言い訳ですから。とりあえずゴブリンのクエスト探してみましょう」
「よっし、そうと決まれば早速ギルドへ行くべ!」
俺たちは慌ててその後を追った。
~ 冒険者ギルド ~
冒険者ギルドに到着すると、貧乳だけど美人の受付のお姉さんがエルフ男の姿を
しかし、ネフューが
エルフ男が子持ちだったという事実が――そんな事実はないが――まだ心に引っ掛かっているのだろうか。乙女心は複雑だ。
そんなお姉さんに向って
「とってもきれいなおねえさん、こんにちは!」
「あら、可愛いお嬢さん……えっと、シンダリンさんのお連れの方のお子さんかしら?」
「はい!わたしの パパはマーカスです」
おいおい! 何を始める気だおっさん!?
「そうそう、確かマーカス・ロイドさん! 素敵なお父さんよね」
「うん! パパはとっても強くて優しくて、カッコイイの!」
「ええ、ええ、カッコイイお父さんよね」
「ほんとう!? パパも、うけつけのおねえさんがとってもキレイでいつも見るたびにドキドキするって言ってたー!」
「あら、あらあら、そうなの? あらあら、あらあらどうしましょう?」
お姉さんの顔がポッと紅く染まる。
チョロイなおい! もしかして幼女効果なのか?
「あんなキレイなお姉さんが、わたしのママになってくれたら、パパもわたしもとってもしあわせになれるのになーってパパいってたー」
「そ、そうなの!?」
エルフ男とヴィルはこの茶番をジト目で眺めている。
それにしてもこのおっさん――
やるな!
俺は心の中で親指を立てた。【幼女化】スキルに新しい可能性を見出した瞬間である。
エルフ男がさっとお姉さんの前に出て、幼女(マーカス)を隠すように自分の後ろへ回す。
「失礼。コボルトかゴブリンのクエストを探しているんですが――」
エルフ男が目の前に近づいてきたので、お姉さんはドギマギした様子でまた顔を赤らめる。
おいおい。
今後の受付お姉さんの心の行方が楽しみになってきたぞ。
二人の子持ち男の間で揺れ動く乙女心!
そしてドロドロの恋愛関係!
そして 修羅場! さらに修羅場! いいぞ修羅場!
今後、受付のお姉さんのことは生暖かい目で見守ることにしよう。
「えっ、えっと、コボルトかゴブリンですね……少々お待ちください。確か……」
そう言って受付のお姉さんは掲示板でクエスト発注書を探して持ってきてくれた。
「こちら、コボルトの依頼が来ております。発注元のナイクラ村の近くにコボルトが集まって集落を作ろうとしているみたいなので、掃討して欲しいとのことですね」
コボルトは犬系獣人種だ。一応、亜人種ではあるが人より動物に近い種は獣人と呼ばれている。森の中を小集団で移動しながら暮らしているが、ある程度規模が大きくなると集落を作って定住することもある。
集落を作ろうとしているということは、それなりの数がいるということでもあった。
「数が多いのだとしたら、他にもメンバーを募った方がいいのかな?」
俺の疑問に対してエルフ男がイケメン笑顔を向けて答えた。
「いや、コボルト相手ならぼくの魔法に有効なものがあるし、ヴィルにも活躍して貰えると思う」
「ほぅ」
エルフ男が何か腹案を持っていることに感心するより、俺はそのドヤ顔にイラッとしていた。
受付のお姉さんの方はというと、そのドヤ顔にハートを射抜かれたらしく、両手を胸の手前で乙女組みして目にハートを浮かべていた。
チッ。
あっ、思わず心の中で舌打ちしちゃったZE!
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