第243話 幼女艦長!?

~ グレイベア村長宅兼旅館 シンイチとライラの部屋 ~


 北方の古代神殿から帰還した当日、俺とライラは懐かしい人々との挨拶もそこそこに、疲れてすぐに眠ってしまった。


 みんなも、俺たちに気を使ってくれて、そのまま静かに寝かしておいてくれた。


 翌朝、久しぶりの安眠ですっかり疲れが取れた俺とライラは、爽やかな目覚めを迎えることができたのだった。


 それにしても朝から周囲がやけに騒がしい。


「何かあったのでしょうか?」


 そういって小首を傾げるライラを抱きかかえて、扉を開くと騒がしい音と酒の臭いが一気に部屋に流れ込んで来た。


 ゴツン!


 部屋から出ようとした俺は、足で何かを蹴ってしまった。


「んがぁぁああああ」


 俺が蹴ったのは、一升瓶を抱きながらイビキをかいて眠っているマーカスの頭だった。


「マーカス!? なんでこんなところで寝てるの!?」


 ライラがクィックィッと襟を引っ張る。


「シンイチ様あれ……」


 俺の注意を引いたライラが指差す方向を見て唖然とした。


「んがぁああ」 ※ヴィル

「お姉さーん! 日本酒お代わりぃぃ! ジョッキでお願いぃぃ!」※トリフィン(Dカップラミア)

「あっ、アタシも日本酒ぅぅ、ジョッキでお願いぃぃ!」※ラモーネ(Fカップラミア)

「ふにゅぅぅう」 ※ミリア(ダークエルフ)

「んごぉおお」 ※フォーシア(ダークエルフ)

 エトセトラ、エトセトラ……。


 村長宅兼旅館の廊下には、床に寝そべったり、壁に寄りかかったりしている酔っぱらい共で溢れかえっていた。


「これは足の踏み場もないな……よし蹴ろう」


 俺は腕の中にいるライラを抱き直して、足に絡みつこうとする酔っぱらいをひょいひょいと避けたり、蹴飛ばしたりしながら、食堂へ向った。


 ゲシッ!


「あんっ! 蹴るなんてひろぃれす! タヌァカ様ぁぁあ」 ※ミケーネ(Dカップラミア)


 ガシッ!


「わたしを置いていかないれぇええ!」 ※ノルフィン(Dカップラミア)


 さすがはラミア族と言ったところか、ラミアーズ酔っぱらい女子たちは的確に俺の足を捕らえて絡んでくる。


 プニッ! プニップニッ!


 い、今の音? えっと足元に絡んでくる酔っぱラミアをね。その……蹴ろうとしたんだけどね。

 

「あ~ん❤ タヌァカさまのエッチィィ!」 ※エレノーラ(Fカップラミア)

 

 グリグリグリグリグリ!


「ちょっと、ライラ痛い! 梅干しぐりぐり痛い! わざとじゃない! エレノーラを蹴ろうとしたら、たまたま胸に足が当たっただけなんだ!」


 グリグリグリグリグリ!


「その足で何度もエレノーラさんの胸をプニプニしてました! プニプニってしてました!」


 グリグリグリグリグリ!


「ごめん! ごめんてっ! つい出来心で、つい出来心でぇえぇえ!」


 食堂に着くまでライラは許してくれなかったよ。




~ 村長宅兼旅館 食堂 ~


「おー、二人とも起きてきたか! さぁさぁ、まずはしっかりと朝食を取るが良い!」

「うーっ! うーっ!」


 食堂に入ると、ルカとグレイちゃんが先に朝食をとっている最中だった。


「シンイチ様、ライラ様、おはようございます」


 俺とライラの姿を見つけたステファンが、俺たちを席に案内してくれる。


「おはよう、ステファン。それにしても旅館中が凄いことになってるね」


「お二人の帰還を祝って、昨晩からどんちゃん騒ぎです。旅館だけじゃありませんよ。グレイべ村と地下帝国のあちこちで、今も宴会が続いていますから」


 ステファンによると、俺とライラが戻ったという報せを受けて、グレイベア村と地下帝国挙げての大宴会が開かれているらしい。


 大宴会といっても、ちゃんと準備して催されているわけではなく、住民たちがそれぞれ勝ってに飲めや歌えの大騒ぎを繰り広げているということだった。


「さぁ、どうぞこちらへ、すぐに朝食をお持ちしますので」


 そう言ってステファンが案内してくれた席には、既に先客たちがいた。


「「あっ!?」」


 その先客たちと、目が合った俺は同時に声を上げる。


「これは田中……タヌァカさん、はじめまして、私、護衛艦フワデラ艦長の高津と申します」

 

 そういって幼女が立ち上がると、その隣にいたもう一人の幼女と女性が慌てて起立した。


「この二人は私の部下で、小さな方が南、彼女が坂上です」


 幼女に紹介された二人は、俺に向って敬礼をして自己紹介した。


「帝国水陸機動隊 南大尉であります!」

「帝国特別警備隊所属 坂上です」


 間違いない!


 この幼女は、ホドリスとミカエラが言っていたイザラス村を訪れた凄い魔法使いだ!


 その魔法使いは幼女の姿をしていて、俺を探していると言っていた。


 どこかで……おそらくドラン大平原での俺の【幼女化】に巻き込まれたんだろう。 


 もしかして、俺はトンデモナイことをしてしまっているのでは?


 と今更ながら思い至った俺は、背中にどっと冷や汗が流れるのを感じていた。


「えっ、えっ~と、はじめまして、俺……ぼくは田中真一と言います。えっ、えっ~と……もしかして皆さんって、て、帝国の方ですか?」


 帝国という言葉が俺の口から出るのを聞いた三人の目が、キラリと光った。


 色々と混乱していた俺は、そのとき、たった一つのことしか考えることができなかった。


(えっと……帝国軍の艦長を幼女にしちゃった場合、業務上過失傷害とかになるんだっけ?)

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異世界転生ハーレムプラン ~ 最強のスキルが【幼女化】ってマジですか?~ 帝国妖異対策局 @teikokuyouitaisakukyoku

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