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「いいのって、言われても。守ちゃんがそうしたいんでしょ? 実際隆二さん素敵だし」
「ほんとに? それって母ちゃんは認めてくれるってこと?! 僕ずっと苦しかったんだよ。反対されるに決まってるって」
「……守ちゃんがいいって思ったんでしょ?」
「うん」
「それなら母さんの承諾ありなしで好きな人決めるの?」
「いや……そ、それは……」
「ならいいじゃない?」
「……」
「守ちゃんが好きな人が守ちゃんの好きな人。これからの人生共にする人なんでしょ? よかったわね守ちゃん」
母はそう言うとにっこり微笑んでくれた。その笑顔は昔よりは確かに若くはないけれど、僕が泣きじゃくってた頃よく励ましてくれた母の笑顔そのまんまだった。
そうだ。母ちゃんはいつも僕を否定しなかった。
どんな時も、何があっても、どんなに驚くような事があっても、母ちゃんはいつも傍で笑ってた。
大丈夫って笑ってくれてた。
僕が思い悩むよりずっとずっと懐の深い人だということを思い出した。
「母ちゃん……」
母の笑顔に僕は胸が一杯になってしまった。
しばらく静かな時間が流れて僕は俯いたまま何も言えなくなって、そのうち何故か目の前が滲んできて涙が出てしまった。
僕が俯いている間、母さんはずっと隆二と嬉しそうにクッキーの話、実家の茶畑の自慢のお茶の話をしていた。
母ちゃん……ありがとう。
「いやあ、思ったより入会してくる生徒が多くてさ、参った参った結構時間かかっちゃった」
後から駆けつけた可憐も合流して、その日の夜はお寿司をとることになった。
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