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「このお菓子は英国のものなんですけど、都心のデパートに行けば大抵売ってます。よかったらもう一つあるので持って帰りますか?」
「あら~! 隆二さんありがとう。やさしいのね。やさしい上にハンサムだなんて~! もういっそのこと守ちゃんの母ごとどうですか~! なんて、きゃーーーいや~!」
そう言うと年甲斐もなく照れて真っ赤になり手を顔で覆った。
「あのね。他に何か言う事ないの?!」
「他に? そうねぇ~隆二さんはほんとに、うふ、素敵だから、守ちゃんがあんな情熱的な手紙書くほど好きになってしまってもわかるわ。血は争えないってことかしら?」
「そんな情熱的になんて書いてないでしょ? しかも何、血って?!」
のん気な口調の母に流石に僕も少し苛立ってきて隆二を見て顔を赤らめる彼女に尋ねた。
「あなたの伯父さんがね~、男の子ラブラブでその子と海外で暮らしてるのよ~」
「はぁ? そんなの初耳だけど! しかも伯父さん死んだってお父さん言ってたよね?」
「死んでなんかいないわよーこの間も元気な手紙くれたわよ~~海外でだったら結婚できたってとうとうその相手の男の子と結婚しちゃったのよ~」
「えええええーーーー!」
「だあらちはあらそえにゃいって」
「クッキー食べながら話さないでよ!」
黙ってクッキーをひたすらほうばる母。なんというか驚いた。僕のこういう性癖って。ほんとに血だったんだなって……。
「うっ……」
クッキーをほうばりつつ、急に涙ぐむ母に僕と隆二は動揺してしまった。
「か、母ちゃん、ど、どうした?! クッキー喉に詰まったか?!」
「これは問題だひゃ~」
「な、何が?!」
ドキッとして母を見る僕。
「なんひゃ守ちゃんがかわひそう(可哀想)になって~……日本じゃ結婚できらいのよね~ごめんねこればっかりは母さん助けてあげられにゃひわ~」
「問題はそこか?!」
「あっ、そういえば、最近ほらニュースで! 同性婚まではいかないけどっ、ほらっ、それに似た資格は得られるってええとどこだったっけ? きゃあああ良かったわね~守ちゃん!!」
はぁ……。
僕はどんなに両親が傷つくか姿想像して気持ちが落ち込んでいただけに、何も言えなくなった。
「母ちゃん、ふざけないで本当の事言ってよ、息子が男の人とできちゃったんだよ。いいのそれで?」
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