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「あ~! 守ちゃん~守ちゃん~こっち~こっちよ~!」


 駅に着くと僕の姿をすぐに見つけたらしく、短い髪の4,50代らしき女性がひらひら手を振っていた。

 あの小さなシルエット。醸し出す不思議なオーラ。間違いなく母親だった。


 ああ、もう帰りたい……。


「守ちゃん~! 見つからないのかしらね。守ちゃ~ん! そこの可愛い守ちゃ~」

「やめてよ、恥ずかしいっ!」

「あ、気づいたっ」


 どう反応したらいいか僕の横に無言で立ち、隆二は僕の次のアクションを待っている。僕は諦めて彼女の近くに向かった。


「気づいたっ。じゃないよ、どうして来たの?」

「どうしてって、お手紙もらったから~来てね~って!」

「来てね~なんて書いたっけ?」

「書いてあるわよ~ほら~」


 母は僕が書いた手紙の裏を指した。丁寧に点線を書いてここをきってねと書いてある。母はなんでもちゃんと最後まで読まなくて、大事な書類ごとはさみでちょっきんしてしまうことがある人だったので注意書きのつもりだった。

 実際注意したところでやはり手紙は変なところが切れてたけど。


「きってね……ここを切ってねって書いたつもりだったのに……」


 よく見ると住所に近い位置だったこともあり、100歩譲ればこの住所にきてねーと書いてあるようにも見え……るかなぁ? 


「そうなの~?」

「母ちゃんいつも変なトコ切って手紙ばらばらになっちゃうから、わざわざ点線書いて指示したんだよ」


 傍にいた隆二は黙ったまま僕らの様子を見ていた。


「あ、ごめん、あのっ、その、母ちゃ、いいや、母さん、彼が……」

「ああ、ああああ……。本当に滝川隆二~。か、かっこいいわ~」


 隆二の方へ視線を向けると、改めて顔をじっと見て急に頬を赤らめる母。って人の話聞いてるんかい!


「初めまして」


 隆二がどう対応したらいいのか困って頭を下げます。


「人に道聞きながらきたんだけど~すっかり……迷っちゃいました~」

 あっけらかんとした母の態度に隆二もどう対応したらいいか困っている。

「迷うような道じゃないと思うんだけどな~」

「そう? 守ちゃんでもきっと迷ったわよ~」

「そ、そうかな?」


 僕も段々自信がなくなってきた。


「とにかく、守ちゃんのお家へ行きましょう~!」


 正確に言うと僕の家じゃなくて隆二の家なんだけどね。

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