2
車内は空調が良く効いていて僕は外の暑さをしばらく忘れていた。
山道を越えて国道から私道に変わると辺は沢山の草木で茂っていて、都会と比べるとまるで数ヶ月分の緑の栄養をもらってる気がする。
「あ……」
しばらくして走り去る道路の脇に緑の雫霊園まであと一キロと書かれた看板が流れ一瞬それが目に入った。
車は坂道を登り始めると、目の前に広大な土地を切り崩して作った沢山のお墓が見えてきた。
長いうねうねした上り坂を登ると、入り口には大きくて綺麗な観音様が手を合わせた格好で立っていた。
車は徐行して僕はそれを正面から見上げることができた。穏やかなすべてを包み込んでくれるような目を伏せた柔和な微笑みと祈りを捧げるような手を合わせた仕草にどこか心癒される。
総合施設らしき建物の前に車が止まると僕らは一旦降りた。緑に囲まれた霊園はとても静かで夏なのに空気もひんやりしているように感じる。
澄んだ空気と日の光が大きな木の葉の隙間から零れるように降り注ぎ、眩しさで僕は一瞬目を細めた。
なんか……凄く、ほっとする。綺麗なところだな。
総合施設の中では祭祀を執り行う会場があるらしく、それはしめやかに執り行われていた。
入り口の休憩室には大きな花屋さんがあり、僕らは一緒に菊やゆりなど色とりどりにアレンジしてある仏花の束を二束買いまた再び車に乗り込みました。
「行こう」
「……はい」
誰かのお墓に行くんだなと思いながら彼を手伝い花束を抱えながら黙って彼について行くことにした。
お墓は沢山のエリアで分かれていてどこも似たような風景だった。僕は思わず迷子になりそうになった。
違う角を曲がろうとして隆二の手に腕を引き寄せられた。
給水場所で隆二は立ち止まる。ひしゃくの入った桶に水を汲むと僕らは滝川家の墓というところの前にいた。
墓石そのものは小さく、けれど洋風な花の模様が墓石の周りを飾った洒落たつくりのお墓だった。
隆二さんが前の枯れた仏花を替えようとしたので、僕も手伝って花瓶を洗った。
花が飾られたところで隆二さんの様子を見ると、彼は今真上にある透き通った空のような清々しい表情でお墓の手入れをしていた。
一つ一つ丁寧に墓石を清掃していて僕が同じようにやさしく周りの雑草の手入れをすると「ありがとう」と目を細くして微笑んでくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます