3

「ここはね、僕の母親の墓なんだ」

「お母さん……」


 墓石を見つめる隆二は何かに甘えるような顔を見せる。それは僕が見たことのない少しだけ少年のようなとても安心しきった顔……。

 僕は胸の奥がジンとして隆二を包み込んで抱きしめたい衝動にかられた。


「前からちゃんと報告しなきゃなって思ったんだ。ここに誰かを連れてきたのは君が初めてだ。どうしても母に君を会わせたくなった」

 

 え、こんな大切なところに……誰もこの場所には来たことがないんだ。

 僕はなんだか隆二が僕を特別扱いしてくれているということを改めて感じて、体中が熱くなった。

 嬉しい。とっても……。


「……隆二」

「手を合わせてくれるかい?」

「もちろん」


 隆二が最初に手を合わせると、僕もすぐその後に手を合わせた。

 なんてお祈りしたらいいのかわからなかったけど、こんにちは、初めまして、お世話になってます。

 そんなありきたりの言葉を掛けた。


 僕が手を合わせ終わると、隆二さんはなんだか落ち着きない様子でそわそわしだし、何か言いたそうなそぶりを見せました。


「どうしたんですか?」

「いやっ、うん。そのっ。こういうのって初めてだから何て言ったら良いのかわからなくて……」


 妙に赤くなって、辺りを少し気にするようにキョロキョロしだしてる。

 僕はどうしたんだろうかと隆二の焦る顔をみながら、こんな顔もするんだななんて呑気なことを考えていた。


「なに? そんな照れるような事なの?」

「いや、うん……」


 隆二さんは咳払いをすると、改めて僕の方を向く。


「守、僕は昴とのことを君に話した時から感じていた、昴よりもずっと君がいいと思っていた理由を考えていた。明らかに彼と君には違いがあって。そしてそれは守と僕にとっても凄くプラスに進んでいくことだと。それがはっきりわかった時凄く心が開放された気がした。いや、それよりも君が僕がいいって言ってくれたのが本当に嬉しくて、幸せだと感じたんだ」


 そう言うと隆二さんはそっと僕の手を握ってくれた。


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