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「どれだけ付き合いがあったと思ってるんだ、僕にはお前の考えている事などお見通しだ」

「そういう風になんでも僕を分かったように言うのが嫌だって言ってるんじゃないですか!」

「違うのか? 僕に当てつけるように次から次へ男を変えていって僕が苦しんでいるのを楽しんでいたんだろう?」

「……」

「自分があまりにも僕に心の中を見透かされるから、それがお前は怖いんだ。僕がお前を知りすぎていることに何を怖がる必要がある。いつだって僕はお前を見ていたじゃないか」

「そういうのが嫌だと言ってるんだ! まだわからないのか!!」


 壮絶な言い合いに僕は何も言えずにただそこに棒立ちしているしかないのが、もどかしいやら悔しいやらでその場に立ってるのが辛くなってきた。

 二人はお互いに過去の彼らを知っていて、お互いの性格も熟知していて……。僕がまるで歯が立たない。

 

 なんだかこの場にいる自分が隆二と昴さんの痴話喧嘩でも見せつけられてるみたいで辛い。


「確かに、昴さんのほうが守より遥かに僕のことを知っています。自分の行動や考えも意味も汲み取る。それは僕に対してだけじゃないのかもしれないけれど。昴さんは凄いと思います。それに比べて守は鈍感でなんにもわからない」


 えっ。


 僕は目が点になった。


 隆二……そ、そんなぁ。

 僕確かに鈍感だけど、それは認めるけど、でもさ、それはないんじゃないかなぁ。

 ぼ、僕だって少しは空気は読めると……思うんだけどなぁ……。


 でも隆二の言うことももっともだ。僕は隆二の事何も知らなすぎている。

 考える事も、行動も。たぶん生きてきた世界が違っていたから。


 隆二は僕の方を見て何故か微笑んでいる。とっても優しい表情で僕を見つめてくれている。

 鈍感な僕なのにどうしてそんな優しい目で見つめてくれるの?


「けれど、知らないからいいんです。始めから何もかも見透かすようなカンの鋭いあなたよりも、何もわからず、そして何が飛び出すかわからない彼といる方が生きていて楽しい」


 隆二さんの言葉に僕は拗ねた。


「それじゃまるで僕はおもちゃみたいじゃないか」

「おもちゃか……そうとも言えるだろうな」


 ううっ……。


「でも知らない方が知りすぎているよりはずっといい。見透かされるよりもずっと……僕は何も構えず自然体でいられる」

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