5

 僕は頭の中が混乱状態だった。隆二の言ってる意味がよくわからない。


「恋人同士だったら、互を見つめて相手の一挙一動に敏感で、非の打ち所なく相手を理解しているのは完璧なのだろう。でも、昴さんすみません。僕は自分のばかり見つめて、自分の考えを常に見抜くような人は必要ないんです。自分を知らなくても、同じ景色を見て美しいと、同じことをして楽しいと、美味しいものを食べて美味しいと、そう思って僕に共感して笑って傍にいてくれる人がいい……」


 昴さんは立ち尽くしたまま黙っていた。


「僕が昴さんではなくこの守がいいという意味、理解していただけましたか?」

「……それで? これからどうするつもりなんだ?」

「ええ、僕は彼と一緒になりたいと思います」

「一緒に……?」

「彼と結婚したいんです」


 ええーーーーー! あまりの衝撃に僕はその場で固まってしまった。


 結婚って……一緒になることだから、あの、でも僕は、男なわけで、あれ? 男同士って結婚できたっけ?

 いやいや、落ち着け。ちょっと冷静になろう。


 黙ったままの昴さんはそのままその場所を離れた。


「大丈夫です!」

 僕は昴さんの背中に話しかけた。彼は立ち止まる。


「僕は彼の人生に責任取ります。何があっても、彼と離れません!」


 昴さんは背中を見せたまま再び歩き出した。

 その背中は挑戦的と好意的とも思えず、保留にしておいてやるという意味なんだろうなと思った。



 二人きりになって僕らはなんとなく気まずかった。

「守、これから仕事なんだろ?」

「う、うん……」


 隆二……結婚するって……結婚って……。

 先ほどの混乱が頭を掠めて僕は隆二に聞きたいことが沢山あったけれど、先に隆二に頭をポンと撫でられ、先手を打たれてしまった。


 それからの僕は仕事をしなきゃいけないのに頭の中は混乱していて、少し意識が飛んでいたかもしれない。

 それでもセリフが頭に入ってて言えてる自分が、この仕事に慣れてきたんだなと思わせて、変に自分自身に感心してしまった。


 その後はのぼせる様な不思議な気持ちだ。

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