3
「しょ、証拠は……」
「お前は、隆の事を何も知らなさ過ぎる……」
「……」
「あいつは気まぐれで冷静そうに見えてすぐに火が付くところがある。けれど飽きやすくてすぐ男を変えるんだ。お前で何人目だと思ってるんだ?」
「……!」
……そんな。
昴さんは振り返ると長い艶のある黒髪を軽くかきあげた。
「僕に対するあてつけでやってるのだろうけど、結局最後には僕のところに帰ってくる。いつもそうだ。お前も傷が浅いうちに隆の本性を知ってさっさと別れた方がいい」
「違います。彼はそんな人じゃないです」
僕が言っても昴さんは口元に薄く笑いを浮かべるだけで、そのまま出て行ってしまった。
隆二、昴さんとまだ話し合ってないのかな。
遊びのわけない。
でも即座に言い返せないほど僕は隆二の過去を知らなかった。
僕はその場で悔しくて下唇を噛んだ。
僕は来客室から出ると、既にエレベーターは階下に向かっていて、すぐにその先の階段を急いで降りた。
ふと出入り口の方を見ると昴さんが誰かと揉めている。
僕はその様子を見て焦った。
「どう……して?!」
隆二がいつの間にか車できていて昴さんと何か揉めているようだった。
僕はそのまま彼らを追いかけるようにガラスのドアを開いて表に出た。
「隆二!」
僕が焦った顔をしていると隆二は僕の姿を見て驚いたようだった。
「守っ、昴がお前に何か言ったのか?」
隆二は今にも昴さんに殴りかかろうとするような勢いだ。
「隆二やめて!」
僕は隆二のシャツの裾を掴んで止めた。
「さっき僕の方から昴さんのところへ話をしに行った。でも去り際に守のところへ行くと言うから、僕の自宅へ行ったんだと思ったんだけど、まさか守の事務所に来てるなんて思わなかった。昴さん守に何を吹き込んだ!」
隆二の勢いに反発心を感じたらしく、昴さんは彼の手を跳ね除けた。
「勘違いするな、この間の芝居のパンフレットを渡しそびれただけだ」
「嘘だ。あなたならそんな事のためにわざわざ自ら足を運んだりはしないだろう」
「この事務所の社長にも用事があったそのついでだ」
「……」
隆二は苦々しい顔をして昴さんを睨んだ。
その昴さんはため息を一つつく。
「まるで子供だな、いつまでも僕に反抗して抗う子供だ」
「違う」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます