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 僕は心臓がきゅっと痛くなった。

 可憐はずっと、ずっと……呑気に生きてきていた僕の盾になってくれてたのか。


 隆二は僕も彼女と同じように守を護ってやれるのだろうか。ってその時思ったらしい。


「可憐さん……凄いんですね」

「いや、そんな当たり前だろ、最低だよ、今で言うセクハラだよセクハラ。しかも相手が生徒だけじゃなかったんだよ?」

「えっ」

「中学の時に化学の先生がいて、そいつもやばかった。守のクラスの友達に頼んでなんとか護ってもらったけどね。もちろん先生だろうが関係なしにぼこぼこにしてやった。それでちょっとあたしが停学くらったことがあってさー。全く高校が隣でよかったよ、警察に相談したこともあるんだけどさ、男だってだけで取り合ってももらえないしさ……あたしが強くなるしかなかったんだよ」

「背中の傷はその時にね……今まであたしがぼこったの恨みに思ってか変態先公がそいつら集めて集団で襲い掛かってきやがってさーもちろん返り討ちにしてやったんだけど、1人だけナイフ持ってるの気づかなくてさ、切りつけられちゃった」

「……切りつけられたって……警察には?」

「行かない、行かない、当時そんな事したら守があたしの怪我の理由知ってショック受けるだろ? だから言えなかったんだ。でもさ、ちょっとこの傷怖いみたいでさー付き合う男はこの傷見てみんな逃げちゃうんだよねーいやぁ参った参った」


 可憐は頭を掻きながら冗談半分に笑っていたっていう……。


 ……。

 しばらくリビングは静かだった。


 僕が今すぐに思ったことを言えなかったのは隆二も察してくれたらしい。


 「今までの守の可憐さんへの態度を見て、これは言うべきだと思った。学生の頃の守と今の大人になった守なら、辛いだろうけど受け止められるだろうと思う。可憐さんが一人で背負い込むものではないと思ったから」


 隆二の意見はもっともだと思う。


 彼は僕を一人にしようと気を使ってくれたのか、話終えるとそのまま「ちょっと買い物に出てくる」と言って家を出た。

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