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「凄い人だね~!」

 劇場にはまだ会場まで一時間はあるのに、大勢の人が待っていた。


 この季節は夕方5時近くになってもまだ日が高い。

 劇場は見上げるほど大きく、有名なデザイナーが手がけたらしく、まるで近未来の宇宙船のような形に見える。

 三階席まであって、エントランスは大きな自動ドアだ。

 そこから奥の階段まで赤い絨毯が敷き詰められていて、上品な花柄の模様が誂えてある。


 僕は小さな劇団のお芝居はしたり観たりすることがあるけど、こういう大きな会場での芝居は久しぶりだった。

 けれど何度きてもお芝居は胸が弾む。出演するわけではないのに、僕までなんだか緊張してきた。


 会場のお客さんは若干若い女性が多く感じられた。

 それに付き添う彼氏や個人的にこの劇団のファンである男性のファンが集まってきたようだ。

 エントランスには僕よりも若干身長の高い、沢山の大きな祝いスタンド花が飾られていて、その中の名前を眺める。

「白鳥瑠璃さん、あ、瑠璃さんだー」

 嬉しそうに桐香くんが微笑む。

「あれ? 桐香くん、瑠璃さん知ってるんですか?」

「知ってるよーお友達だもん」

「そうだったんですか!」


 へー。


 よく見ると桐香くんと僕の事務所からも花を届けていた。


 業界は狭いなーと思ったものの、僕が入れてもらえた事務所も海倉さんの知り合いの人だから、桐香くんと海倉さんも知り合いなのかななんてどうでもいいことを考えていた。

 僕の予想通り、冬条昴さん宛に海倉監督の名前の花もKOビルのスタッフ一同という札と連名で飾られてある。

 やっぱり繋がりがあったんだ。

 

 ふと、その花の中に僕がよーく知っている人の名前が。


 滝川隆二……。


「あ、滝川隆二」

 僕の心の声を聞かれたと思いドキーーっとした。

 空良くんがニコニコとその名前を見ている。


「あ、あのっ、空良くん、この人知ってるの?」


 僕が緊張した気持ちを抑えながら尋ねると空良くんがにっこりと微笑み返した。


「知ってるも何も有名じゃないですかー。滝川隆二って」


 目をクリクリさせて僕を見る。時折くせっ毛をいじりながら興味深そうに花を見ていた。


 隆二さんの事務所と隆二さんの名前の連名で札が二枚、花に差し込まれている。


 花は紫と青に黄色が散りばめられて上品な色合いだった。

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