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「すっ、すみませんっ」
「い、いえっ」
何故か顔を赤らめる空良くん。
意外と桐香くん力あるよね。
「ごめんごめん」
「すみませんっ」
桐香くんが照れ笑いを浮かべると、高岡さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
高岡さんは慌てて荷物の中からパンフレットを取り出す。
「ごめんね守くん、空良くん、お詫びにこのお芝居のパンフレット! 千秋楽用の豪華版」
高岡さんにそれを押し付けるように手渡された。
「うわー凄いー」
僕は手渡されたパンフレットを見た。
そこにはまるで皇帝みたいな姿をした綺麗な美青年とそれに寄り添う美人なお姫様みたいな人が立っていた。
「凄いですね、パンフレットまで豪華だ。さすが海洋、守さん中身見てみましょうよ」
「う、うん」
僕がページを開くとそこには主演の人の名前が書いてあった。
「冬条昴(とうじょう・すばる)」
その男性は少し気の強そうな凛とした姿で立っていた。王族というにふさわしい出で立ちで、本当に様になっている。
つり上がった瞳に向かって右に泣きぼくろがある。
綺麗なまっすぐな黒髪……。
そこにいるだけで存在感があるようなそんな人だった。
気づいたら背中を僕の胸に押し付け、腕に捕まりながら、空良くんがパンフレットを眺めていた。
って僕に寄りかかったままなんだけど。
「空良くん」
「はい?」
「重いんですけど……」
「……このままじゃダメですか?」
「えっ」
「あっ! いえっごめんなさっ」
何故か顔を真っ赤にして空良くんは離れた。
結局明日お昼に事務所に集合になった。朝から隆二も可憐も出掛けてしまうから特に何も伝えることもないなと思い、僕は彼らには何も言わなかった。
翌日お昼に僕ら4人で集まり一緒に行こうということになった。
僕らは遅めのお昼ご飯にパスタを食べた後、四時から会場の劇場へ向かった。
池袋にあるフィラメント劇場へは駅から徒歩で行ける。
ごった返す人の波を潜りながら、僕にとってはちょっとした運命が待ってることも知らずに、文字通りその幕開けが始まろうとしていた。
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