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僕が東京に出てきてから可憐は父と晩酌をする機会が多くなって、二人して一升瓶開けてもケロっとしてるのよ~なんて母からの便りで話を知っていた。
僕は二人の顔色、特に隆二が心配で事あるごとに様子を盗み見ていた。
もうお酒も尽きた頃に、可憐に半ば脅迫的に促され、冷蔵庫にあるビールと食器棚の中にある陶器のコップを出した。
ビールはちょうど良く冷えていて、可憐が隆二のコップに注ぐと心地よい泡音を立てていた。
可憐はもとよりそれを飲み干す隆二の動く喉仏を眺め僕は息を呑む。二人ともまだ顔に出てない。
僕はお酒4杯目辺でもうなんとなくクラクラしていた。
たぶん頬も体もほんのり茹で上がった感じに赤くなってると思う。母親も飲めない質で彼女に似たのだと思う。
「隆二さん、ちょっとペース落ちてるんじゃない? まだイケるでしょ?」
可憐が挑発的な視線を隆二に流す。隆二は陶器に残ってるビールを一気に飲み干し、すぐにコップを差し出した。
「そうこなきゃ」
にやりと笑いながら継ぎ足す可憐に僕は焦りだす。
「ちょっと、二人ともいくらなんでも飲みすぎなんじゃ」
僕の忠告なんて誰も聞いちゃいない。
不敵に微笑しつつも視線だけは挑発的に睨む可憐の視線を挑戦と受け取ったのか、隆二さんは無言で可憐の差し出したコップにも継ぎ足す。
可憐はそれを美味しそうに一気に飲み干すと、手の甲で口を拭って口角を上げて目を細める。
いつの間にか互いに一気飲みが始まる。
一体二人とも何杯飲んだのか。
流石にビールのストックも切れてきたところで、可憐の頬がほんの微かに赤くなってるような気がしたのを僕は見逃さなかった。
救いなのは僕の料理を二人はきちんと食べてくれたこと。
「あーもう二人ともご飯綺麗に食べてくれてありがとう!」
大げさにちょっと芝居がかってたかもしれないけど、お前らそろそろやめような。食器を片付けるからな? と終わりにしたがる僕の目論見など、全く通用しなかった。
まだ物足りないのかあろうことかサイドボードから瓶の中身が三分の一位になってるブランデーを隆二は取り出した。
「もうこれしかないんだけど、可憐さんどうですか?」
顔色変えずにケロリと隆二が不敵に微笑むのを見て、可憐は少しギリっと歯ぎしりをした。
いや、というかこれなんの勝負なんだよ!
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