10
「それさ、フランスの結構いいブランデーじゃない?」
「うん、かなりいいよ。でもこれしかもうお酒ないことですし」
隆二がブランデーの瓶を軽く振ると飴色に見える液体が揺れた。
「勿体ないから今度でいい、もうお腹一杯だし。勝負なら別の勝負がしたいなー。ねー美青年のお義兄さん」
なんでそんな互いに挑発的なのかわからないけれど、隆二まで片眉を上げてその挑戦状を受け取るように微笑む。
その時僕は悟った。
二人とも平気そうな顔して実は相当酔ってる。
「今度は何の勝負にしますか?」
「そうだねー何の勝負するよ? まだシラフなんだろ? なにか掛けてさ」
「いいね、何にする?」
「トランプなんかどうよ。一発で酔ってるかそうじゃないかわかるけどね。顔に出てないけど実は隆二さんはかなり酔ってるから判断つかないのがバレちゃうかー。ねぇ、守」
「えっ」
「それはお姉さんの方じゃないですか? そんな顔赤らめて、なかなか艶々しいお顔ですよ」
「またまたー隆二さんの彼女に怒られちゃうよ、そんなあたしを挑発すると」
「いや、僕の彼女は寛大だから大丈夫ですよ」
ちょっと……二人とももう止めたほうがいいんじゃ、たぶんまともに思考働いてない。
睨み合ったままで、少しだけフラリとしている二人の真ん中の席で、僕は頭のどこかで警笛を感じた。
徐に立ち上がると、キッチンに避難する。
少し僕だけでも落ち着こうと、マグカップにお茶のティーパックを入れて、ポットからお湯を注ぐ。茶葉のいい香りが僕の気持ちを落ち着かせる。パックをお皿に上げると、口をつけて軽く啜った。ふぅーなんて思わずため息が漏れる。
隆二はリビングのDVDなどが置かれている棚の引き出しから西洋風のトランプを取り出し、こちらにウィンクした。
「あんたの妹さ、いい度胸してるよね、あたしの可愛い弟に手出すなんてさ」
「いままで手出されてなかったみたいですねー。よく無事でいたものだ」
トランプをテレビの前のガラスのテーブルにコトリと置く。
可憐がそれに吸い寄せられるようにテーブルの前のソファにどっしりと座り腕まくりをした。
「当たり前じゃん、あたしが手出させなかったんだしー」
「なるほどなるほどお姉さんに感謝ですねー」
「なぁに? あんた結構守のこと詳しいじゃん……」
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