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「親不孝者の癖に父さんも母さんもお前に甘いからな。お前が子供の見るドラマに出るってだけで大喜びだよ。全く、昔から呑気なんだから」
僕はお皿にちらし寿司の具材を乗せながら、複雑な気分だった。
お酒のお供用にお刺身も並べていく。糸状になった大根を乗せて行きながら可憐の両親を思い浮かべている表情をさりげなく盗み見た。
ブロッコリーと豆、パプリカのサラダと鳥のササミの梅和えを用意しつつ。なーんか調子狂うなぁと。昔とは違う空気感に戸惑う。
しばらく会ってなかったからかな。
食事が始まると三人で乾杯する。冷酒のグラスは江戸切子の青色の綺麗なグラスを隆二が出してきてくれた。
からすみを入れた花びら柄の小皿に添えて、僕らは食事をし始める。
「お前彼女とかに料理作ってもらってるの?」
「えーあ、いやっ、僕が食事作ってる。そのっ、か、彼女は仕事が忙しいからっ」
「彼女なんの仕事してんの?」
「えーあーまぁーそのっOLさんで……」
「お前もしかしてキャリアウーマンに食べさせてもらってんの?」
可憐が胡散臭そうな顔をする。ふと先程まで眠れたおかげかすっきりした顔をして他に意識が回るようになったようだ。
辺りを見回す。
「それにしてもさ、この部屋ちょっと殺風景なんだよね。なんかイメージしてたのと違う。もっとさ、こう女臭いかと思ったんだけど意外とシンプル」
「そ、そう? それなりに可愛いものもあると思うけどな」
僕が言いよどんでいると、なんだか合点がいかないという風に可憐は不思議そうな顔をした。
「ま、いいや。あたしの部屋も結構さっぱりしてるし、この部屋の趣味見て彼女とは気が合いそうだわ」
そう言いつつ、冷酒を口にした。もうこれで七杯目……。
可憐の隣の席にいる隆二が少し僕に微笑みかけた。
そりゃ 彼 女 ならいいかもしれないけどさ、 彼 氏 だったらどう思うわけ?
「隆二さん、お酒あんま進んでないよ、飲みなよもっと」
可憐は隆二さんにやたらとお酒を勧める。隆二さんもよく可憐のペースに付き合ってるな。もう10杯目だ。
困ったもんだ。
「ねぇちゃん!」
「お前も全然飲んでないじゃないか」
僕がたしなめる頃にはちょっとなんとなーくマズイ気がしてきた。
こいつ結構酒強いかも……。
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