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「なんだか噂通りの方で安心しました」

「えっ」

「とっても穏やかな優しい方だって聞いてたので、安心して委ねられました。本当にありがとう。滝川隆二さんの最後の作品だから正直緊張しちゃって、彼とはまだ対談が実現してないのよ。でも本当にいい作品になりました」

 

 写真も撮られてとても緊張したけど、僕には初めての事だらけでひたすら雑誌の編集の人に恐縮していた。


 そんな僕に新鮮さを感じたのか周囲は和やかに進行し、僕は改めて俳優の仕事は確かに表に出るのは自分だけど、こうやって裏で色々な人が動いてくれているからこそなんだなぁと改めて思った。


 で、とうとう今日の仕事が終わってしまった。


 可憐は僕の家までくるのか。まずいなぁ……。


 待てよ。車で待ってるって事は僕がこのまま歩いて帰っちゃえば! と思いかけて空良くんに言付けしようと思って僕はずっこけそうになった。

 空良くんの隣に可憐が既にいて、雑誌の人に頭を深々と下げてお願いしますとかなんとか言っていたからだ。


「ちょっ、姉ちゃん、車で待ってるって言っただろ」

「お前どうせここで仕事最後だから車に乗らずに帰ろうとするだろうからここで待ってたんだ。ちゃんと絹美くんが家まで送ってくれてナビ設定もしてあるから、どっちにしてもあたしはお前の家には行けるんだけどね」


 うわーー。終わった。僕はがっくり肩を落とした。



 僕は覚悟しなきゃいけない。隆二とのことどう話したらいいのだろうか。ごめんね隆二、こんな僕で。

 こんな、こんな大山の姉を持っているばかりに。

 きっとみんなが冗談で言う、僕の背後に大山が見えるというのは、きっとこの可憐の事なんだろうな。

 可憐の生霊が僕には常に憑いているんだ。それがきっと見る人に僕の背後に山が見える現象を生み出しているんだ。


 マンションのエントランスで空良くんは心配そうに僕を眺めていたけど、どうしようもないので僕は彼に笑顔を向けた。


「へー結構凄いマンションだな、お前頑張っちゃった? あれ、でも仕事今日からだって言ってなかったっけ?」

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