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 隆二さんと同じようにシャツを羽織っても、格好良いというよりはなんだかだらしないだけで、結局隆二さんにチェックしてもらう。

 けれど色々魅せてるうちに何故か抱きしめられてそのシャツを剥かれてしまう。

 そしてそのままベッドへ。っとと、僕はまた変なこと思い出しそうになってるっ。


 一人で妄想の世界へ突入してしまったことを恥じて、頬でも高揚してるんじゃないだろうかと汗をかいてるうちに、カットの合図がかかる。午前の撮影は終了した。


 助監督の七瀬さんが、休憩でペットボトルのスポーツドリンクを口にしている出演者達の前に僕を連れて行く。

 僕が近づくと、喫茶店のカウンターに半分飲んだペットボトルを置いて主役と思われる体の引き締まった青年がこちらを振り返った。


「彼が今回の主役の透成 悠斗(とうな ゆうと)役の神灯 彰人(シントウ アキト)くん、こちらが風飾 陸(ふしか りく)役の春原守さんです」

「初めまして、よろしく!」


 すっと差し出した大きな手が鍛え上げられた体を想像できるくらいガッシリとして、僕も手を差し出した。握手するだけ力強さがわかってヘタレな僕は威圧された気分になる。

 でも決して彼は横柄な態度ではない、人懐っこい笑顔をこちらに向けていた。爽やか青年。


 隣に笑顔でもう二人の出演者がいた。


「彼女は天童 向日葵(てんどう ひまわり)役の鈴菜 アキさん、その隣が久志 広夢(くし ひろむ)役の矢吹 鶫(やぶき つぐみ)くん」


 それぞれがみんな僕と同じくらいの年かな? それよりも若いかなと思わせる感じの出演者で、楽しく撮影できそうな気がした。

 アキさんの第一印象は瞳が大きいこと。まつげが長くて肌も白く、唇もピンクのグロスが似合う健康そうな美少女だ。隣の鶫くんは眼鏡をかけた頭の良さそうな好青年。


 僕は彼らとこの先どう絡むのかなと、多少緊張が混ざりつつも期待と興奮で一杯になった。

 やっと嘘のような気がしていたドラマ撮影が現実となって目の前に現れた感じだ。

 でもまだそれでも僕は目の前の光景が夢のように見える。

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