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 一通り挨拶が終わると、彰人君たちと一緒に場所を移動する。今日はこれから演技指導の先生と共にアクション指導をしに行く。僕はアクションシーンは少ないと言っても、全くないわけではない。危なくない転び方とかヘタレなりに一緒に指導を受けるらしい。


「春原さんって涼宮 桐香(すずみや きりか)と同じ事務所なんだってな」


 彰人くんがフランクに話しかけてきてくれた。


「涼宮さん?」

「ストレートボブの一見女みたいな感じの男いなかった?」


 僕はああっとすぐに思い出した。事務所に行った時にエレベーターや部屋で打ち合わせしてた時に会った子だ。


「お知り合いなんですか?」

「ん、まぁね。あいつ結構面白いよ。前に舞台で一緒になったことがあったんだけど」

「そうなんですか」


 なんだか和やかな会話が続く。主役の彰人くんの人懐っこい笑顔を見てるだけで、僕は少し最初の緊張感から解放された気分だった。


「さて、次はアクション指導の先生に会いたいと思います」

「はい」


 緊張するな。僕はアクションシーンも交えた芝居をするのは初めてだった。


「守さん、それでは僕はちょっと西映さんとの打ち合わせがあるので、帰りにまた控え室で合流しましょう」


 空良くんがファイルを胸に抱えながら微笑み、僕らを見送った。彼は彼で僕のマネージャーなりの仕事があるようだ。


 案内されたジムは建物の地下一階にあるようだ。それぞれある程度の広さを持った練習場が見え、全面はガラス張りになっている。これはダンスの時などに自分の姿を見ながら綺麗に踊れるようにレッスンするのだ。


 先生が先にもうみえているということで、僕らは彰人くんを先頭にその部屋に入る。

 が、僕はちらっとその部屋の様子を見た瞬間、道着を着た人物を見て戦慄が走った。

 それは晴れた空にいきなり電光石火の如く雷に打たれたような衝撃。体が長年鍛え上げられた俊敏な脱走に転じ、僕はすぐさま廊下に引き返した。

 心臓が今にも破裂しそうになる。僕は天を仰いで十字を切ると空に祈りを捧げた。

 これはきっと現実ではなく夢に違いない。


「春原くん、どうしたの?」


 七瀬さんが不思議そうな顔で部屋から顔をのぞかせる。もう他のメンバーは部屋に入ってしまっていた。


「あーそのっ、とてつもなく急な用事を思い出しまして」

「トイレ?」

「いいえっ、そのっ」

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