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「ええと、今日はこれから現場に行って、出演者さんとの挨拶なんですけど、車の中でざっとでいいんで、台本読んでもらってもいいですか?」
「はっ、はい」
「守さんの役は、4話からなので撮りは三日後になりますけど、セリフ覚えとか大丈夫ですよね」
「だ、大丈夫ですっ」
少し固くなっている僕を見て空良くんはふっと微笑んだ。
「僕の前でそんな緊張しなくていいですよー。守さんってやっぱり噂通り真面目な人なんですね」
ん?
不意に変な事を言われて、その僕の噂はどこからと思いかけ、不意に髭面の海倉監督を思い出しそうになって、慌てて僕は頭に浮かぶ映像を手で払った。
「どうしたんですか?」
「い、いいえー」
苦笑いする僕に不思議な顔をしつつも空良くんは話を続ける。
「放送は一ヶ月後なのでまだスケジュールに余裕ありますね」
空良くんはスーツのポケットにボールペンをしまうと、厚い紺色のファイルフォルダーに書類などを詰めて、身支度を整えている。
「さて、それでは共演者の方に挨拶しに言って、その後雑誌のインタビューです。それから、BLドラマについてのコメントと、ええと」
僕は自分がなんか芸能人になったみたいでちょっとこそばゆい感じがした。でも空良くんは見た目は幼そうなのに責任感が強そうだ。
「まぁ、今日の帰りにまた明日のスケジュール表渡しますね!」
「車を回してきます!」と僕に伝言すると、彼はこのビルの地下駐車場の入口で待っていて欲しいと告げてその場を後にした。
「はぁーー」
僕は渡された台本を抱えて、指定の場所で待っていた。
やっぱり初めての現場は緊張するなぁ。どんな出演者さん達と一緒になるんだろう。
でもライダーってあれだよね? 戦隊ものだよね? 僕の姉が子供の頃夢中になって見ていたあれだよね?
僕も格好良いと思ってみていた。その俳優さんのお芝居のところ。
でもってライダーに変身してからは、姉が興奮して見てたんだっけ。
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