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「ええとね、早速なんだけど、来週から『カメレオンライダー』というのに出て欲しくて、ええと、配役は、お金持ちのお坊ちゃんで、ヒロインに恋してるんだけど、少々ヘタレ気味な感じ。まぁぶっちゃけ当て馬的な感じかな? 西宝さんがそれにぴったりくる役者が欲しいって言うんで、海倉が押してきたからさ、ああ、僕もドラマ見たよ、あれ見てねうん。この役は確かに君にピッタリだと思った。でもライダーと言っても、あんまりアクションは問われないから大丈夫。主人公じゃないしね。初仕事がいきなりいい役でよかったねー。詳しくはあっちの部屋で君のマネージャーが待ってるから、そこで段取り話して。じゃ、頑張ってねー」
一方的にまくし立てられ、手をひらひら踊らせた。
僕はそのまま受けざるを得ない。
台本を手にしていたら、社長さんに、ここを出て真正面のドアが僕らの部屋だからそのまま入ってと言われた。
僕のデスクもそこにあると教わると、先程桐香くんが入っていった部屋だなと思った。
社長室から出てその部屋のドアをそっと開ける。
部屋は思ったより広い、学校の教員室みたいに向かい合わせに机が並んでいて、それぞれの机の上にはぬいぐるみやフィギュア、好きなアイドルらしきフォトスタンドが置かれていた。みんな出払ってるのか人はあまりいない。
机の塊とは別に窓際にも席がある。
そこに桐香くんとそのマネージャーらしき人が背を向けて座りながら何やら話し合ってる。
「は、春原守さんですか?」
声を掛けられてふと振り返ると、僕と年がそう離れてなさそうな男の子が、少し顔を高揚させて立っている。背は僕より低い。
「はい、そうですっ」
僕も慌てて返事をした。
「初めましてっ! ぼ、僕は今日からあなたのマネージャーになる、絹美空良(きぬみそら)と申しますっ」
緊張してるのか少し震えている様子が僕にも伝わってきて、僕まで緊張してしまう。
「「よろしくお願いしまっ」」
お互いに頭を下げたらおでこがいい感じにクリーンヒットしてしまった。
「「あいたたた……」」
互いに額を抑えてる。
「ご、ごめんなさいっ、痛くありませんでしたかっ?!」
空良くんが慌てて僕の額に手を乗せる。
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