第23話 親友との再会?(1)

今回王都ではメインイベントの接見が済んだら、あと幾つかやるべき事がある。


傭兵ギルドから昇格の知らせが来たのを何度も無視していたからな。



私は傭兵であり冒険者であり、商人ギルドにも所属してる。

冒険者と傭兵が一緒だと思う人もいるが、全く違う。

冒険者は依頼の探索、採集、偵察の他、雑務だったりする。殆ど便利屋だ。


傭兵は言葉の通り戦いに特化した職業だ。


冒険者ももちろん戦闘スキルを持つ人も多いが、こちらが遥かに専門的だったりする。


例えばある地域の討伐や駆除の依頼がある時、先ずは冒険者が出向く。規模の大きさや対象の調査、どの様な性質の依頼なのかを把握する。



それを持ち帰って領主が依頼主に報告、もしくは傭兵ギルドに移行する場合は幾らかの手数料を取る形で情報を共有する。


勿論冒険者だけで解決可能な案件はその場で処理する。



要は私の場合、領主に兵士の派遣をお願いしたり、傭兵ギルドに応援を要請をする場面が無かった。

全部一人で解決したからね。



鉱山ダンジョンのリッチー率いるアンデッド軍団、黒い渓谷のワイバーンの群れ、人狼集団、トロール、オーク集落、大規模なゴブリン群落、レッドベアー、サーベルタイガー、グレートボアなどなど。

数えると切りが無いな…


オーク集落は珍しく会話で解決出来たケースだ。族長と拳で分かり合えて、その後は近くの村と協力関係になったそうだ。


オークからは山で狩った動物の肉を、村の住民達からは小麦粉や鉱山で採取した鉱石をインゴットにしたものなど。

互いの得意な分野での補い合いが行われてる様だ。


族長との決闘が終わった後、戦士をもてなすとオーク族の女性を差し出された時はビックリしたけどな。


しかも人族の血が混ざった混血らしく、うっすら緑色の肌以外には全身が引き締まったアスリート体型の美人だった。人間の好みを知った上での塩梅だろうか、流石だな族長。


あんたとはこれからカンブ(マブ友)だぜ!



そういや、温泉リゾート地でシトリーから売春ギルドの長になって欲しいと唆されたな。


体の至る所から愛液を垂れ流している。そんなあられもない姿で何を言う。

そのだらしない体から売春させてやろうかと思った。

「ええ⁉︎ そんなプレイしたいの?ゲテモノだね〜。でもちょっと興奮するかも。

あら、勿体ない。はむっ!」

私「くっ!こいつ」


奴め、中々手強い相手だったな。



回想に浸るうちにそろそろ接見の準備が整ったようだ。

今回は非公式下で行われるもので、それ程規模は大きく無いらしい。


本来なら爵位を持ってない者(貴族か騎士では無い者)と皇帝との接見は成らないとの事だ。


面倒臭い貴族社会のしきたりと最初は思ったが、身分の不確実な者と皇帝を一緒の場所に居合わせるなど、暗殺してくれと言う様な事らしい。


確かにこの世界だと身の回りを調べるには時間が掛かる。身分証など偽造しようとすればいくらでも出来るし、写真も一般的では無いからな。


ごく稀に幻想魔法使いの中で人の姿を紙に写せる魔法があるらしいが、対象が拒否せず、暫くじっとしなければならないので実用性は低いとの事だ。



今は王宮のある場所で準備された礼服に身を包み待機している。ドラゴン娘達もそのドレス良く似合ってるぞ。


使用人「ヤガミ様、接見の間の用意が出来ました。ご案内致します。今回は付き添いの方々も御一行様と言う事で接見が許されました。」


私「ご配慮に感謝致します。」


使用人「こちらになります。」


執事に案内され、ドラゴン娘達と一緒に廊下を移動しながら私の目に入ってきたのはギリシャやローマの建築様式に近いと思われる王宮の作りだった。



殆どの素材が大理石で出来ている。

3階くらい高さの太い柱から壁一面がな。しかし自然との調和も考えたのか無理矢理な装飾の飾り付けなどは乱発せず、品格ある形で適切な場所に飾られてある。


石で出来た物とは思いもよらない品々だった。女神を模した像の衣服が今にでも風に揺らぐ様な印象を与える。


光と影の変化によるものなのか、素晴らしい造りだった。



私「素晴らしい造形の数々ですね。」

使用人「こちらは王都でも指折りの造形マイスターによる[美の女神フレイヤ像]になります。」


私「…………………」

あのチビかよ。


『チビじゃ無いもん!フレイヤは美しいの!美の女神なんだから!』


げっ!聞いていたのか。

『あ、悪かった。今度また埋め合わせするから。』


『本当⁉︎ やったー!アキラ大好き!待ってるからね。』



使用人「ヤガミ様?何か具合でも?」

私「あ、いやいや。素晴らしい造形に見惚れてしまっただけです。すみません。先を急ぎましょう。」




こういう広々した建築物を見て歩くのも悪く無いなと思う一時であった。




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