第20話 王都からの使者(4)

使者「お前か!この私をわざわざこんな辺境にまで出向かせおって。来てみればこんな若僧の為に寝る間も惜しんで何度も馬を変えて急いだとはな。」

「若僧!皇帝陛下の勅命を下す!跪けいい!」

私「収録したか?」

リコ「ばっちりです、マスター。」


使者「何をもたもたしておる!帝国法で裁かれたいのか!」

私『黙って死ね』


という流れを考えていたが、そんな事もなく使者さんは物腰柔らかく、博識で非常にコミュニケーション上手な人だった。


そういやアウレリウスさんから「ヤガミ殿!上の方に何卒よろしくお願いしますとお伝えください!お願いしますー!」と頼み事をされたが。

あーハイハイ、あなたの頑張りは必ず伝えますよ。有能な人材だね。

私も欲しいかも。


その後、せっかくなので麓の村人達に別れを告げて来た。

今度はしっかりと肉の一夜干しを貰ってきたのさ。インベントリに入れたのでいつでも楽しめる。

村長はこれから捕獲したワイルドボアの子達を村で飼うようにして、村の特産品にして行きたいそうだ。


是非頑張って欲しい。買いに行きますよ。


それから王都に向かう道は、よく整備されていた。

物資の移動や兵力の展開が素早く行える、安定的な大国を維持する為には必要不可欠な事だ。

このインフラ整備は感心したよ。流石、帝国と呼ばれるだけのことはある。

私達は敢えて山道を選んで奥まった場所を旅したからな。


ホールン子爵「ここだけのお話ですが、陛下は第7皇子を溺愛しておられまして、前線でお怪我を負ったとお聞きした時は大変心配なさっておりました。

それも部隊が全滅に近い被害を受けたとの事でしたからね。


ヤガミ殿がその場に居なかったら取り返しの付かない事になったかも知れません。」



やはりマルカスは皇子だったのか。

うん、まあ取り返しのつかないも何もほぼ死亡確定してましたからな。


私「偶々ポーションを持っていて、ご無礼とは知らず皇子殿下に処置をしてしまいました。ご無事で何よりです。」



ホールン子爵「またまたご謙遜を、危機迫る場面で人を救助するなんて並大抵の事ではありませんぞ。

実は王都では何らかの工作での可能性も念頭に置いて、ヤガミ殿の足跡を調べさせて頂きました。

しかしその後の帝国領内での数々の活躍や、山間地域住民達からのヤガミ殿に対する評判は、素晴らしいとしか言いようがありませんでした。


本来、間者ならば名前を変えて重要都心で情報活動を行いますが、ヤガミ殿にその様な行動は一切無かった。本当に旅人だったんだなと。

大変失礼な事をしてしまいました。」



いや、都心部なんて歩いて通るだけでリコが隈なくスキャンしちゃうし、違うと思うんだけど。黙っておこう。


私「国政を担う方々からして見れば怪しいと思われたのも仕方ないかも知れません。

都合が良すぎましたからね。そのことに関して不満などございません。」


ホールン子爵「そう言って頂けると助かります。上からの指示で、王都に着くまでヤガミ殿には不自由のない旅になれるようにと命じられました。

そこて、ここから馬車で2時間程の場所に帝国でも有数の温泉リゾート地がありますが、ヤガミ殿は温泉はお嫌いで?」

私「大好きでっす!」


ホールン子爵「それはそれは。では今までのお疲れが癒される様に案内します。」


ホールンさん、あんたわかってるわー!そうそう、そういう観光地行って見たかったんだ!ドラゴン娘達はどうかな?うん、なんだか嬉しそうだ。


では行ってみよう!






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