第19話 王都からの使者(3)

朝早く村を出発した私達は砦に向かう。一番先に砦の通過を目指してだ。

出発を教えたのは村長だけ。

あとは皆んな頑張って欲しい。


流石に商団は準備が早いな。

私達よりも早く関所の入り口に陣取っていた。

そろそろ門が開こうとしている。


リコ「マスター、こちらの関所に向かって移動してる集団がいます。出発地点は王都からです。もう少しで麓の村に着くようです。ヘルメットモニターに出します。」

軍の移動が?それにしては規模が小さいな。関所の補助戦力かも知れない。何も思い当たる節は無かった。


少し寄り道はしたが、大陸北東から王道まで来ては見物して、そこからは北を目指した。

帝国領では問題を起こす事なく、行政の力が及ばない小さな村を転々としながらコツコツと狩りと討伐を請け負い、解決しては移動することを繰り返していた。



ドラゴン娘達にはドラゴンでの変身は許可せず、人間のままでの行動や振る舞いをさせていたのでドラゴン出没の騒ぎになる事も無かった。


あ、干し肉貰ってくるの忘れた。一夜干ししたのを焼いて食べるとうまいんだあれが。

地球では一夜干しと言ったら魚しか思い浮かべなかったが、肉の一夜干しはここで食べて「なるほど!」と納得する一品だった。


住む環境が違えば口にするものも変わるが、そこで生まれた加工技術と言うのは通じるものがあるんだなと、食べ物の事を考える間に順番が回ってきた様だ。


検問官「次!」

傭兵ギルドの身分証を出す。

大陸北側が内戦状態になっているので、何かと傭兵の需要が高まっていて関所の通過がし易いのだ。


私「傭兵ヤガミ アキラと一行のパルガ、マヤです。こちら帝国傭兵ギルド発行の証明書です。」

流石に関所の検問官相手に威張ってもしょうがない。ここは穏便に済ますのだ。


検問官「ふむ、傭兵か。まあ北は今忙しいからな。

名前が………アキラ?ヤガミ アキラだとぉ⁉︎」


珍しい名前だけとそんなに驚くことないだろう。

「少々お待ちください!ただ今、上の者が参ります!」


???何か関所が騒がしくなったぞ?なんで?

パルガ、マヤ。武器に手を付けるのはやめなさい。きっと何かの手違いなんだ。問題ないさ。


おお、向こうから偉い人みたいな人が走って来た。そんな急がなくても逃げたりしませんから。


「大変お待たせしました。私、この関所の総括責任者であるアウレリウスと申します。

ヤガミ アキラ殿で間違いございませんね?」

私「間違いないです。何か問題でもありましたか?」


アウレリウス「実は王都からの通信が数日前にありまして、ヤガミ アキラと言う旅人を見つけたら何としてもその場に留まらせるようにと。

ヤガミ殿がこちらを通る事は予想出来た様でして、数日前に王都からの使者がこちらに向かっているとの事です。」

王都からの使者か…なんか面倒臭そうな匂いがするな。

パルガ、マヤ。私の顔色を伺って武器に手を出そうとするのはやめるんだ。責任者が今にでも泣きそうな顔してるじゃないか。


その後、私達は砦にある応接の間に案内された。


「そういう事で大変申し訳ございませんが、ヤガミ殿にはこの砦で暫くの間、待機して頂きのです。

絶対失礼のない様に対応しろと言われました。

かねてよりヤガミ殿の帝国領内でのご活躍の噂は伺っております。その素晴らしい働きにより各村からも報告が王都へと集まってる様です。」


おー、流石にここまでくると貴族階級の将校となるので会話のいろはを心得ているな。


「もし宜しければ雪山トロールや鉱山ダンジョンのリッチーアンデッド軍団をお一人で討伐なさったと伺ってますが、にわかに信じがたいお話でしたね。詳細をお聞かせて頂けないでしょうか?

おい、早くお茶の用意を!

御一行の方も一緒に如何でしょう。」


パルガ「自分らが主人と同席だなんて不敬の極み。このまま待機させて頂きます。」

マヤ「同じく。この場で待機する。」


アウレリウス「これは…!驚きました。うっかり情人の方々かと。こんなに美しい付き添いだなんて羨ましい。大変失礼しました!」

おお、ドラゴン娘達もなんたが機嫌が良くなったみたいだな。

それと時間稼ぎの為に自慢話を聞きたいとはね…そんなありきたりなやり方が通じるとでも?


大好きです!


世の中、己の自慢話を聞いてくれるという誘惑に勝てる人はそうはいないさ。

「おお!その大剣を身のブレなく正確に暴れ回るトロールの喉元を狙えるなんて流石ですな!」

「そうなんです!我が主人は最強なんです!」

「主人に掛かればあんなのは敵じゃない。」


なんだかあんた達、意気投合してね?そんなに煽てても何も出ないんだぜ。

うん、二人は後でしっかり可愛がってやろう。



そうする内、廊下を走る音が聞こえた。

兵士「失礼します。アウレリウス様、王都から使者が到着しました。」

いよいよ来たようだ。







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