第17話 王都からの使者(1)
アキラ一行は大陸中央から大陸北に進みながら冒険を続けていた。
今滞在してる場所は北と中央の間で聳え立つ山脈に位置する砦。
そこの麓にある村だった。険しい山脈のせいでモンスターや山賊も多い。
本来、軍の要塞が位置する場所には駆除や討伐も定期的に行われるものだが、大陸北の反乱により兵力が北内陸に移動、展開することになり、今砦には検問の為の最低限の人員しか無かった。
おかげで山賊とモンスターが大暴れ。北と中央を繋ぐルートであり、人の移動も多い。
大規模な商団なら護衛の傭兵や冒険者を多く配置して安全面にも気を配るわけだが、少人数の行商人や巡礼者、旅人はまともに冒険者を雇う金など無い。
彼らは商団の移動時に後ろを付いて行ったり、軍の兵力が移動する時に同行したり、麓の町に人が集まるのを待って多人数で山脈を渡る方法などを取っていた。
商団の後を追うのはモンスター対策にはある程度効果がある。
しかし山賊にしてみれば良い的だ。
後ろから山賊に襲われても商団は助ける義理などないし、寧ろ良い生贄である。
その事もあり、商団はそれらを気にしない。
軍の兵力移動での同行は一番手堅い選択だが、いつなのかは全くわからないし、回数も少ない。
偶々遭遇したらラッキーなくらいだ。
一番多いのが少人数同士が集まって数十人規模での集団となり、険しい山を越える方法だ。そこに冒険者の集団が紛れていたとしても、依頼されてもないので命を掛けて守ってくれることはしない。精々飛んできた火の粉を払うだけだ。
悪い奴はそこで保護料名目で金をせびる。そういう奴らに限り、襲撃があれば我先に逃げる。
関所を越えるという事はそれ程大変なんだ。
私達は麓の村で暫く滞在しながらモンスターと山賊の討伐を行った。
表向きは村長からの依頼によるものだが、どこの村も冒険者を雇えるほど余裕のある所はあんまりない。
少しの報酬と宿代を肩代わりする条件で始めたのだが、もし資金に余裕があるにも関わらず邪な気持ちで利用しようとするなら容赦はしない。
幸い今回の村もぎりぎりでやりくりしてる所で、私達の提案に涙を流しながらお願いされたものだ。
タダでやっても良いが、それは人間をダメにする。それに甘えてより要求はエスカレートする。
縋る気持ちが感謝から普通となり当たり前となって、こちらがやめようとすれば「今までやってきたのに」と恨みの気持ちと変色していくのだ。
だから少なくても報酬を支払うという行為は私達だけでなく依頼する側の為でもある。世の中、都合の良いタダなんかないのだ。
私「そちらに1匹!」
パルガ「はい!」
大きなグレイトボアがパルガを向けて突進する。「グゥオオォォー!」
森が終わった開豁地にハルバードを構えたパルガ。そこを目指して突進するグレイトボア。
パルガは動じずにどっしりと中腰で構えてる。
そのパルガの間近まで接近していたグレイトボアがいきなり前からバランスを崩して倒れた。
「フンっ‼︎」
その隙を逃さず上段からハルバードを振り下ろし一撃で倒すパルガ。
先に仕込んでいた罠でグレイトボアを誘い込み、体制を崩した隙に急所を狙い仕留める。
効率良く狩を進めていく。
私「君達からしてみればこんな魔物など取るに足らない存在なのはわかってる。しかしなぜこの様なやり方をするかと言うと、君達の力のコントロールに重点をおいてるわけだ。
今はつまらないし、人間化した手先の感覚に慣れ難いかもしれないが、いずれは君達の成長に大きく関わる事になる。」
今の彼女達は爆撃機の様な存在だ。広範囲を持って余す力で焼き尽くす。
正に絨毯爆撃な訳でこれは力の弱い集団には効果的だが、同じ器量、もしくは上の者には通じない。
力の集中、コントロールの向上により彼女達の成長を促す。
数千発の500ポンド爆弾より、1発のバンカーバスターが戦況を左右する場合があるのだ。
それと敵の力量を知り、地形の利を得る。
そうする事により最低限の力で効率良く敵を捌く事が出来る。
今の狩は村の為であるが、彼女達の為でもある。
私「今日の獲物はこれくらいでもう充分だ。村に帰るとしよう。」
「「はーい!」」
村長が喜ぶ顔が目に浮かぶ。
???「その方は今何処にいるのだ。」
???「それが、北の大陸につながる砦がある村に移動したとの事です。」
???「発見報告から追跡が間に合わん!なんて足の速さだ。」
???「しかも訪れた地の悩みどころを解決しながらのこの動きです。」
???「信じられん。なんとしても呼び戻さねば...砦に通信魔法球があるだろう!それを使って足止めさせろ!」
???「あれは敵襲か非常時に使う物でして。」
???「バカもん!皇帝陛下の勅命にあらせられるぞ!今使わなきゃいつ使うのだ!急げ!」
???「ハハッ!」
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