第14話 竜族の娘達(2)

レッドドラゴンの巨体を中心に魔法陣が展開されていく。


その魔法陣は何層にも重なり、大きな輪を描きながら、ゆっくり交差しながら回転を始める。

それぞれが違う性質の魔法を互いに干渉する事無く作用していくものであった。


ドラゴンはこの世界に群輪する最強クラスの生命体であり、高度な知識を持った知性体だ。

物理防御力は勿論、その者らは魔法干渉にも異常な程、耐性を有している。

そのドラゴンを外部からの影響で擬人化させるのは不可能に近い。

道に転がってる一角兎をカエルにするのとは訳が違うのだ。


その為にも何層にも分けた魔法陣でドラゴンの魔法障壁を無力化しながら本来の効果を作用させる必要がある。


その光景は繊細であり、壮観であり、時には聖なる神聖力の介入が、時には欲望に満ち溢れた様な闇の性質を持った力が作用していった。


その魔法陣が今、鍵の番号列が揃ったかの様に動きを止めて明るい光を発してゆく。


初めて試みる、【複合魔法呪文】(マルチプル・マジック・スペルス)の成功である。

ほぼ同時に、しかも作用する順番を間違わない様に注意しながら組み合わせたものだ。


SYSTEM

「世界に初めて【複合魔法呪文】の仕組みを理解した者になりました。」

「【複合魔法呪文】のキャスティング時間が短縮されます。」

「【複合魔法呪文】の魔法列のパッケージングが可能になりました。」

「魔法列のパッケージングによりキャスティングの時間が大幅に短縮されます。パッケージングを行いますか?」


私「YES」


システムのメッセージが流れると同時に私の頭に新たな知識が押し寄せて来る。

こう言うのは少し苦手だ、脳の負荷によるものか、軽いめまいに襲われる。

なんとかならないものか。


SYSTEM「精神抵抗力が上がりました。」


親切にどうも。


明るさが穏やかになりながら、光が粒子と化し空へと消えていく。


先程レッドドラゴンが墜落していた窪みを見ると一人の女性が倒れていた。

髪は程よく伸びてるが、炎の様に赤い色をし全体にウェーブが掛かった様なスタイルだ。

身長は170くらい。肌色は薄いブラウンの色をしている。顔立ちはヒスパニック系の美人だ。


流石に裸じゃ不味いので適当に隠せそうなものをインベントリから出して体に掛けた。


サイラスの兜をオープンして、彼女に向けてフィンガースナップでパッチンと音を鳴らす。

『起きろ』


レッド「…はっ⁉︎」

私「気がついたか。」

周りを見ていてはすぐさま慌てて起き上がった彼女は距離を取っては、私に向けてブレスを吐き出そうとしていた。


レッド「ハァァァ!」

私は素早くす彼女の右側に回り、右フックパンチを腹にねじ込む。

ドーン!

レッド「!!!!!!グェぇぇっ!!ゲホゲホ…!!」


彼女の体が浮き上がり、色んなものを吐き出しながら再び崩れていく。


レッド「ハァ、ハァ、ハァ、うっっ‼︎」

私は彼女の後ろ髪を鷲掴み顔を上げさせては目を直視しながら会話を再開した。


私「やっと話を聞く気になったか?」

未だに痛みと己に起こった身の変化に困惑してるレッドだった。

私「私から名乗ろう、八神 明だ。出来れば話し合いで解決を望むが、敵意を向ければ容赦はしない。

わかったら返事をしろ。」


レッド「わ、わかった。わかったから離してよ。」

オレンジ色の瞳が大きく開き、美しい赤い唇が恐怖で震えてる。

無理矢理髪を後ろに引っ張り、伸びきった喉からの顎ラインがなんとも言えない気持ちにさせる。


こいつ含めて竜族のメスは何故か虐めたくなる様な気持ちを掻き立てるなと思う私だった。



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