ギャルと映画鑑賞

 部屋へ戻り、無駄にふかふかなソファへ座った。さすがにちょっと疲れた。



「腹も減ったなぁ。璃香、何か食べようよ」

「あたしも同じくー。歌い過ぎてお腹ぺこぺこ。幸い、冷凍がたくさんあるから、ちょっと作ってくる」



 待っててね――とウィンクを頂き、俺はその間にスマホを覗く。ネットニュースを閲覧し、世の中の情報を収集していく。


 そんな風にマッタリしていると、璃香が戻って来た。トレーの上には、お洒落なお皿がふたつ。それと透明なグラスに入った飲み物もあった。それをテーブルに並べてくれた。


「この洒落た麺類は、ペペロンチーノか」

「そそ。レンジでチンしたヤツだけどねっ」


 フォークを手に持ち、さっそく食べる。

 味はしっかりしているなぁ、う~ん、美味い。こうして璃香を一緒に飯を楽しむって幸せだなぁ。


「しかし、冷凍食品まであるとはな」

「冷凍は昨日、頼んでおいたの。今はネット注文できるし、警備員さんに受け取りをお願いしておいた」

「なるほどな。って、警備員さんかよ! いいのか、それ」


「大丈夫。天満さんは、信頼できる人だから」

「あー、あのおっちゃんな。いつもいるよな」

「一階に常駐して貰ってるの。だから泥棒とか怪しい人は撃退してくれるし、安心よ」


 へぇ、そこんとこシッカリしているんだな。感心しながら、俺はモグモグとペペロンチーノを食していく。オリーブオイルたっぷりの濃厚で美味い。



 食事を進め――完食。



「御馳走様でした」

「美味しかったね、ペペロンチーノ」

「だな、これで後は風呂入って寝るだけだ」

「あのね、賢。まだ夜は長いんだよ~?」


 ――と、璃香は大きな瞳を輝かせながら、俺を見つめた。


「時間はあるけどな~。普段だったら、アニメか映画を見ているところだな」

「じゃあ、一緒にホラー映画を見よっか」

「でも、どうやって?」


「大丈夫。今の時代はね、ネットプリックスがあるんだよ。じゃ~ん、動画配信サイト~!」


 なるほどな。どうやら、スマホをプロジェクターに接続して巨大スクリーンに映し出すらしい。映画館気分で視聴できるわけだ。すげぇ……。この会社アーク、すげぇ!


 てきぱきと接続していく璃香。設定を終えると、白いスクリーンに映像が映し出された。


「何を見るんだ?」

「えっとね、ゾンビモノかマッドサイエンティストモノかな」


「なんかグロ系っぽいな。でも、興味がある」

「おっ、賢っていける口?」

「まあな、これでも洋画はたくさん見てきたんだ」

「ノリいいねぇ! じゃあ、マッドサイエンティストモノにしよっか!」



 スクリーンに『ムカデ人造人間』というタイトルが出てきた。どうやら、罪もない一般人を拉致って改造する、狂気のマッドサイエンティストが暗躍する物語らしい……ナンダソレ。


 璃香は画面をタップしていく。【再生】ボタンが押されると、いきなり雷雨から始まっていく。眼鏡を掛けた白衣で、白髪の中年男性が変貌していく様からスタート。


 彼の名は『アントニオ博士』というらしく、怪しい研究を続けていたようだ。その研究こそ、人造人間の開発。生きたままの人間をムカデのように繋げ、サイボーグ化するという――まさに狂気の物語。


 ちなみに、改造された人間は殺戮さつりくマシーンと化し、罪もない人々を襲い続けた。しかし、未来からやって来たという正義に目覚め、ガイノイド化(なぜか女性化)した別の世界線の『アントニオ博士』により、ムカデ人造人間は完全破壊された。



 ――以上、そんなハチャメチャな洋画だった。無駄にグロテスクでビビったけど!



「ホラーてか、後半はSFしてたな……。あのロボ化した博士、なんで目からビーム撃ってるんだよ!」

「あは、あはは……」


 笑って誤魔化す璃香。

 もしかして、璃香の映画センス絶望的か? 次回は俺が選ぼう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る