お風呂で甘々な時間

 腕を引っ張られ、例のジェットバス付の特大バスルームへ連行された。マジかよ、脱衣所も銭湯のような広さだ。ぼうっとしていると、璃香が脱ぎ始めた。


「ちょ、璃香! ぬ、脱ぐなよ……」

「別にいいじゃん。もうあたしと賢ってそういう仲でしょ」

「そういう仲って、どういう仲だよ……」


「まあまあ、とりあえずお風呂に入って親睦を深めましょ」


 シャツに手を掛け、ついに璃香は下着姿に――いや、違う。あれは『水着』だ。なるほどな、考えたな。てっきり下着かと思ったら、ビキニだ。


「あ~…まあそれでもエロいけど。てか、俺は水着持ってないぞ」

「腰にタオルでいいんじゃない? それかマッパでも、あたしは気にしないけど」

「俺は気にするんだよ。まあ、温泉とか銭湯ではないし、腰タオルでいっか」

「オーケー」


 それにしたって……恥ずかしいな。

 俺もだが、璃香も高校生。

 璃香に至ってはピチピチのギャル。


 肌にもボディも張りがあって、白くてツヤツヤ。なんていうか……胸も特大級。あんなスイカのようなものを見せつけられると、俺はどこを見ればいいか分からない。



「……うぅ」

「早く脱いでね、賢」

「わ、分かったよ。せめて先に行ってくれ」

「仕方ないなー」



 黒ビキニ姿となった璃香は、先にお風呂場へ。俺も服を脱ぎ、近くにあったバスタオルを腰へ巻いた。これで準備完了だ。


 中へ入ると、璃香がシャワーを浴びていた。うわぁ、色っぽい。なんか大人びてるし。


「……璃香」

「賢、こっち来て」

「え?」


 近くにいくと、璃香はいきなり俺の体に触れた。



「うわッ!!」



 細い指が俺の上腕二頭筋を撫でたぞ。くすぐったい……。てか、璃香の爪は、付け爪で魔女みたいになっているから、ちょっと怖いんだよな。



「洗ってあげるからさ、我慢して」

「そ、そう言われてもな。てか、女の子に触れられるとか初めてなんだが」

「あたしだって、男の子に触れるのこれが初めてだよ」


 それにしては冷静だな!

 いや……璃香も顔は赤いけどさ。

 ああ、もうこっちは心臓が破裂しそうだよ。目の前には璃香の健康的な肉体が、胸が……近い。こんな近距離とか、天国かよッ。


 どんどんボディタッチが増えていく。俺の体を洗ってくれているのだから、当然だけど――しかし、ここまでサービスしてくれるとはな。


「あ、あのさ、璃香。なんでそんな優しいんだよ」

「当然でしょ。社長の、賢の体が一番大切じゃん。それに、あたしって好きな人のお世話するのが夢だったのよね。だから、今すっごく幸せ」


 ガチで幸福を感じている璃香。

 なんだか、これだけ上機嫌にされると……悪い気はしなかった。やっとこさ、洗い終えてジェットバスへ。三~四人は余裕で入れるスペースがあった。


 璃香が先に入って、俺も後に続く。


「なんだこの眺めとギャル」

「あはは……なんか凄いね」

「たいして活動していないのに、もうこの風景を手に入れてしまうとはな。俺の夢がまたひとつ叶ったよ」

「そうなんだ。賢って、もしかして高層マンションとかで住むの夢だった?」


「ああ、高い場所は眺めも良いし、勝ち組って感じがするだろ」

「まあね~。あたしも似たような場所に住んでるし」



 ですよねー。そんな気がしていた。

 いつか璃香の実家も覗いてみたいな。

 大体の予想はつくけど。



 ぼうっと聖町の夜景を眺めていると、璃香が密着してきた。小さな頭を俺の肩に乗せ、腕を絡めてくる。



「……璃香、当たってるぞ」

「うん、わざと」

「そ、そうか……。しかし、ここ数日で生活が一気に変わるとはな……未だに信じられんよ」

「あたし達、まだ高校生だし~、普通はありえないよね。でも、常識に囚われない方がきっと楽しいよ」


 既に楽しいし、この会社を維持する為にも仕事を頑張ろうと思えた。ああ、そうだ。絶対に手放すわけにはいかない。

 会社も、美人ギャル秘書も、凄腕プログラマーも。



「いつもありがとう、璃香」

「ううん、いいの。夢をずっと追い続ける男子は大好きだからね」

「俺の夢はまだスタート地点に立ったばかり。今はきっかけを与えられたに過ぎない……理想を現実のものにする為にも、明日からバリバリ働くよ」


「賢ならそう言ってくれると思った。だから信じてるし、ついていこうと思える」

「今に凄い会社にしてやるさ」



 そう宣言すると、璃香はもっと“ぎゅ”っとしてくれた。

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