一緒にお風呂へ...!?

 会議室を出て、エレベーターで九階へ。

 扉が開くと、そこだけ別次元。

 ここは本当に会社なのか……? この九階だけ特別仕様で通路も広く、扉がいくつか続いていた。何部屋あるんだかな。


「スイートルームクラスで作ってあるから、六部屋ね。ひとつだけ和室だから」


 俺の心を読む璃香。

 たまに鋭いな。


「六部屋がスイートルームクラス……やばすぎだろ」


 さっそく一部屋覗く事に。一番、奥の部屋へ。もちろん、セキュリティカード必須。しかも、かざすだけでロック解除。部屋の中へ入った途端に、自動点灯、換気、エアコン。ああ、もうなんでも自動で便利だなあ!


 中はもう別世界だった。

 マジの高級ホテル仕様。


 落ち着きのあるシャンデリア、L字ソファが並び――既に豪華を演出していた。だが、まだ驚くには早かった。ダークブラウンの木目家具が自然に溶け込み、その先にはキングとかクイーンとか呼ばれる類のベッドが鎮座していた。


 広すぎんだろう!!


 三人は余裕で横になれるぞ。

 その先には聖町の百万ドルの夜景。


 贅沢すぎか……!



 普通にお金取れるレベルだぞ、これは。



「うわッ!! 賢さん、こっちヤバイ!」



 いつの間にかそばから消えていた菜枝が、どうやらバスルームに侵入していたようだ。アイツ、勝手に……。追い掛けていくと、そこにはとんでも光景が広がっていた。


 高級な長方形型のジェットバス。

 広がる全面の強化ガラス。


 やはり、聖町の街並み。



「人生勝ち組の風景かよ!!」

「社長も、これからここに住めるんですよ~」



 璃香は笑顔で言った。言い切った。……すげぇ。けど、いきなりこれは飛躍しすぎて後々が怖いな。前世の俺よ、どれだけ徳を積んだのやら。



「……わ、わたしも使っていいんですか?」


 圧倒されている和泉が恐る恐る手を挙げた。


「ま、まあ……もう会社ウチの社員だし、問題ないよ。俺はホワイト企業かつ福利厚生は最高峰を目指すつもりだったから」


「賢さん、わたし頑張りますねッ!!」

「お、おう。ここに住める分、相応の働きを期待しているぞ、和泉」

「はいっ、任せて下さい」



 ◆



 部屋の割り当てが決まり、今日から俺は会社で寝泊まりする事にした。菜枝は家出少女であり、その処遇は俺に一任されているのでアークに泊まらせる決断を下した。てか、それしか方法がなかった。


 璃香も今日からは、俺と一緒の部屋に住むという。


「――ん!? 一緒の部屋!?」

「あのね、賢。これだけ支援してあげたの、少しはあたしの我儘わがままも聞いてくれてもいいでしょ」


 ギャルモードの璃香は、ベッドに腰掛け足の爪にマニキュアを塗っていた。すっかりプライベートな雰囲気。


「てか、一緒に住むって……部屋は他にあるじゃないか」

「……嫌なの」


 やべ、怒らせたら会社を無かった事にされそうだ。それだけはダメだ。……そうだな、璃香のおかげで今の俺があるのだ。望みを聞くくらい安いものだ。


「分かったよ。俺も璃香と一緒がいい」

「うんうん。でもさ、和泉さん――いえ、栖胡すこちゃんは可哀想ね」



 そう、和泉は帰ってしまった。というか、電話が掛かってきて親から帰って来いと通達があったようだ。まあ、仕方あるまい。あんな殺人未遂事件もあったし、今日いきなり泊まるのにも無理があるだろう。だから、彼女から親を説得してもらうしかない。


 幸い、俺の親父は自由を許してくれている。璃香の方もお父さんが緩いらしく、俺と同じ自由でやらせているようだ。良い親だな。


「明日から、またアークに来るだろう」

「そうだね、賢」


 マニキュアを塗り終えた璃香は、俺の方へ来た。俺はずっと夜景を楽しんでいたというか、璃香の際どい私服姿に目線を逸らしていた。なんで、あんなシャツと短パンの格好なんだか。


 焦っていると、璃香が抱きついてきた。


「――り、璃香……」

「ずっと頑張っていこうね」

「もちろんだ。お前を失望させないよう全力で取り組んでいく」

「うん。じゃあ、一緒にお風呂に入ろっか」


「は……はぁ!?」

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