クレーンゲーム専門店でイチャラブデート

 時刻はもう十九時。

 すっかり夜になって、街はネオンに輝いていた。璃香に腕を引っ張られ、駅の近くにある『クレーンゲーム専門店』へ入った。


「ああ、ここ有名だよな」

「あたし、いつも通っているんだ。賢と一緒に来たかったの」


 向日葵ひまわりのような笑顔で、璃香はそう言った。そんな笑みを向けられると俺はもう“無”になってしまう。このまま流れに身を任せていこう。


「へぇ~、こりゃ凄い。クレーンゲームが奥までビッシリ」

「そうでしょー。ここ、ギネスにも載った500台設置されているお店だよ」

「ご、ごひゃく!? それはスゲェ」


 スマホで軽く調べると、マジだった。このお店、そんなに設置されているのかよ。しかし、これだけあると迷路みたいだ。退屈はしなさそうだな。


 恋人のように腕を組んだまま通路を進む。周りにもカップルがいて、俺はいつ意識してしまう。てか、璃香も顔が赤いじゃないか。



「あ、あはは……」

「……り、璃香。クレーンゲームやろうよ」

「そ、そうだね」



 両替機で千円札を百円に両替完了。



「で、何やろうかな」

「う~ん、あのラノベ全巻セットは!?」


 釣られて筐体きょうたい内を見ると、そこには確かに『ラノベ全巻セット』があった。どうやら、たこ焼きタイプで、卓球ボールを“当たり穴”に入れればゲットのようだ。だが、俺も何度かプレイした事があるが、激ムズなんだよね。


 中々当たりに入らないし、大体場外に落ちて何千円も使う羽目はめになる。


「って、璃香ってラノベ読むの?」

「うん、読むよ。憂鬱ちゃん、大魔王サマ、アホテス、レゼロとか」


 マジかよ。アニメ化している有名なラノベだけど、まさか読んでいるとは。俺も愛読していたので驚きた。璃香とは気が合いそうだな。ていうか、既に合っているけど。


「この中にあるヤツは『ニート転生』か。ああ、すげぇ話題だよな。魔法使いの子が可愛いんだよな」

「へえ、賢も詳しいんだ」

「まあな。じゃあ、さっそくプレイしてみますか」

「うん」


 百円を投入口へ。

 ゲームが始まった。


 まずは【←】ボタンで少し位置を調整。その後に【↑】ボタンで奥にあるカゴの中にある“卓球ボール”をアームで拾う。ここまでは順調。問題はこの後だ。


 たこ焼きの穴に入ればいいが、ここまで来ると後は『運』次第。というか、技術介入要素がない。祈るしか出来ないのだ。



「いけ、いけぇ!」

「入ってくれないかなぁ」



 二人で祈って見守る。

 玉が落下すると、ポ~ンと飛び跳ね余裕の場外。これはハズレ。百円が一瞬で終わった。クソぉ……初回とはいえ悔しい。



「そりゃ一発はないよな。どんどんプレイしてこう」



 璃香と交代しながらプレイ続行。だが、この後も入らない入らない。苦戦は何度も続き、やがて千円を失った。学生にとっての千円は、一万円に等しい。なんて痛手……このままでは俺の財布が大ダメージだぞ。


「じゃあ、次はあたしが千円出すよ」

「いいのか」

「うん、一緒に出し合おうよ」


 協力してくれるとはな、さすが璃香。

 千円札を両替し、さっそく再プレイ。


「よし、今度こそ取ってやる」


 そろそろゲットしないと買った方が早いまである。だが、クレーンゲームは何故か続けてしまう魔力がある。貯金箱とはよく言ったものだ。


 次もハズレ。璃香に交代した。


 すると、今回はアームがうまくからまり、卓球ボールを二個獲得・・・・。おぉ、ここに来てダブルボール! こんなパターンもあるんだな。


 二個もあれば入る確率が上がる。

 これでゲットなるか――!?

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