ギャル秘書の素晴らしき提案

 宮藤は正式に俺の“秘書”になった。

 だが、俺たちは学生の身分。


 退屈な授業が始まっていく。



 あぁ、くそう。もっと話したいことが多いのにな……昼休みまで我慢だ。



 午前中の授業は、ほとんど集中できなかった。俺はこれからの未来ことで頭がいっぱいだった。早く宮藤を語り合いたかったのだ。



 ついに予鈴チャイムが鳴り、午前中の授業を終えた。俺は直ぐに宮藤を呼び出そうとしたが、またしても小島が邪魔をしていた。休憩時間もしつこかったな……。朝、玉砕したはずなのに本当にしつこい。


「なあ、宮藤さん。俺と付き合えよ」

「……」


 宮藤も面倒なのか、もう反応すら示さなくなっていた。



「じゃあ、ライン交換からでいいからさ」

「……」


 しつこい男は嫌われるらしいですよっと。やがて、宮藤は席を立ち、俺の元へ。小島はまたも敗北を喫した。また睨んでくるし。


「いいのか、宮藤」

「なんの事? もう行きましょ」

「お、おう」


 腕を掴まれ、俺は連行されていく。……やばい、ちょっと嬉しい。俺はこれから宮藤を引っ張っていく存在になろうとしていたのだが、今はまだ引っ張られていた。



 ◆



 屋上へ向かうと、宮藤は柵の前に腰を下ろした。隣に来るよう促され、俺は座った。……近いな。良い匂いもする。


「改めて聞きたいんだが、俺の秘書になってくれたんだよな?」

「嘘偽りなく、あたしは協力するよ」


 真っすぐな瞳を向け、俺は照れた。

 良かった……信じて。


「まずはお礼を言いたい。ありがとう」

「ううん、いいの。あたし、賢の事が気に入ったから、これからも一緒に頑張ろうね」


 まぶしすぎるほどの白い歯を見せ、宮藤は笑う。なんて素敵な笑顔なんだ。


「本当に嬉しいよ。だけど、前にも言った通り……カッコ悪いけど“資金難”でね。まずは名前だけの会社で経営していく形にになるかなと」


 だが、宮藤はニッと笑って肘で俺を小突く。なんだ?



「賢、この前言ったじゃん。お金は任せてって」



 ああ……確かに『ビルとか資金の管理は任せてよ。つまり、お金の事はなんとかしてあげるってこと』とか言っていたな。あれって本気だったのか。


「つっても、宮藤にそんな金があるのか? そもそも、そんなお金を出して貰ってもいいのか?」

「うん、いいよ。これは投資と思って。もし会社が成功したら返済してくれればいいし、まあ、将来……結婚してくれるなら返済も不要だけど」


「は……? 結婚……?」


「そ。結婚。一緒になってくれるなら共同経営って形でいいんじゃない。あたしは、ずっと秘書するけどね」



 え、ええええッ!?



 俺は、宮藤を三度見した。なんてこった……こういう事だったとは、予想外すぎた。それに資金の事も本当らしいし。しかも更なる提案に俺はもう、宮藤に頭が上がらなかった――。

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