ギャルが秘書になった日
「なーんてね」
「なんだ、冗談か」
マジで一瞬信じかけた。
このまま付き合ったらどうようかと思ったよ。でも、それはそれで……良かったかな。
「でもさ、会社を作ると言っても、あたし達まだ高校生だよ?」
「高校生社長とかいたろ。出来なくはないよ。会社自体は誰でも作れる。でも俺の目指す会社っていうのはビルを構えて、きちんと経営する事だ」
「へぇ、そこまで考えていたんだ」
「ああ、でもお金なんてない。俺の貯金なんてたかが知れてる。でも、まずは小さなところから初めてみようかなと思うんだ」
「小さなところ?」
「千里の道も一歩からというからな、まずは“秘書”ってわけだ。雰囲気作りは大切だろ?」
真面目に返すと、宮藤は噴きだして笑った。おい、こら。笑わないじゃなかったのかよ!
「……あははは、やっぱり賢って面白いわ」
「お前な……」
「ごめんごめん。今のはノーカウント。よく分かったよ、明日には返答するね」
「本当か!!」
「うん、今日のところは帰ろうっか」
……良かった!
宮藤に俺の夢の話をして。
なんだかんだ最後まで付き合ってくれたし、希望は少しはあるかな。もちろん、断られても後悔はない。少なくとも、明日まで待ってくれるという事は多少なりとも考えてくれるとう意思表示に他ならない。
1%でも俺は望みを捨てない。
◆
その日は別れ、俺は家に帰った。
そして次の日。
いつものように登校し、教室の隅にある席に座る。隣の席である宮藤の姿はあった。だが、クラスメイトの男子・陽キャ全開の小島に絡まれていた。くそう、昨日の件を聞きたかったのに。
だが、宮藤は俺の存在に気づくなり、小島から逃げてきた。本人は唇を噛み、俺を恨めしそうに睨んでいた。こっち見んなッ。
「賢~、待ってたよー!」
「お、おう。宮藤……昨日の件だが」
「おっけー! 賢の秘書になってあげる」
ノリ軽ッ。
そんなアッサリと!?
「いいのか?」
「うん、ただし条件がある」
「条件?」
「そう、条件。あたしが秘書になってあげる代わりに、ビルとか資金の管理は任せてよ。つまり、お金の事はなんとかしてあげるってこと」
それが条件だった。
……って、そんな緩い条件なら問題ない。そもそも、もしこの話が成立したのなら将来的には経理担当も任せるつもりだった。それが前倒しになっただけだ。
「分かった。その条件を飲もう」
「さすが賢。じゃあ、今日からあたしは賢の秘書だね、よろしく!」
握手を交わし、ここに契約は完了した。
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