秘書になってくれ!!

 近くの公園に向かい、ベンチに座った。既に空は夕焼けに染まり、日も落ちかけている。まずい、時間もないな。しかし、ここまでよく頑張った俺。ギャルを連れ出すとか未知の経験だ。


「聞いてくれ、宮藤」

「な、なにかな」


 間を開けて座る宮藤は、少し緊張していた。そんな風にされると俺も余計に緊張する。なんだ、告白するわけではないというのに。


 怯むな俺。

 ここで一歩を踏み込まないとギャルと話す機会なんてもう一生ないだろう。チャンスを無為にしてはならない――!


 チャンスを逃したら、絶対に後悔する。ならば俺は手汗を握り、震える足を押さえつけ、なるべく平静を装って宮藤の視線に合わせた。



「……宮藤、俺の“秘書”になってくれ」


「へ……? 秘書?」



 アカン!!

 この反応はなんだか嫌な予感がする。やばいぞ、唐突過ぎて宮藤のヤツ、脳の処理が追い付いていないようだ。しかし、この反応で良い。これぞ激熱の大チャンス。パチンコで言えば金保留に匹敵するレベルの信頼度はあるだろ! たまに外れるけれど!(親父談)


 俺はここぞとばかりに夢を語った。



「いいか、宮藤。俺は将来『会社』を作るつもりだ。何故かって? そりゃあ、社長になって手っ取り早く稼ぎたいからだ。俺は誰かの下で働くってビジョンが視えないんだ。ならさ、作るしかないだろ……会社を!」


「……賢、それマジ?」


「ああ、大マジ。マジのマジ。大真面目に語っている。笑いたければ笑え、だがな、人の夢は終わらねェ……!!! 俺はいつか大手に匹敵するような会社を作ってやる」



 もう羞恥心とか消えていた。自分の夢をギャルである『宮藤みやふじ 璃香りか』へ堂々と語り、力の限りを出し尽くした。もう、後悔はない。これで嫌われるようなら、それまでだ――。



「笑わないよ。あたしのお父さんが会社経営しているからさ、よ~く分かるんだよね」

「おぉ! 宮藤! なら……」


「秘書かぁ。でも、あたしそういう柄じゃないよ?」

「お前が良いんだ! 宮藤! お前以外は考えられない!」


「そこまで言ってくれるんだ。分かったよ、賢。じゃあ、そこまでの覚悟があるなら、あたしと付き合ってよ」


「…………へ?」



 今度は俺の脳が停止した。えーっと……えっと。今、宮藤はなんと? ツキアッテヨ? ……突き合って――? いや、それはだいぶ飛躍しすぎだ。つまり、付き合って・・・・・の方だ。



 って、それって……。

 俺に好意があるって事なのか。


 えっ……えええッ!?

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