手を繋いでくれるギャル

「け、結婚はともかくとして……本当にいいのか」

「あたしは悪い魔法使い。賢、君の望みを叶えてあげよう――なんてね」

「悪い魔法使いなのかよ~。そこは良い魔法使いにしてくれ」


 ていうか、俺、だまされてないよな。ちょっとだけ……本当にちょっとだけ疑念が……いや、宮藤に限ってそんな事はないだろうけど。そもそも、資金提供だって半信半疑な感じだ。学生にそんな大金があるとは思えない。だから、まだ完全に信じきったたわけでは無い。


「あ~、賢ってばまだ信じてないね」

「そ、そりゃ……ちょっとはな」


「分かった。じゃあ、まずはビルをゲットしよっか」



 そんなポ●モンをゲットするみたいに簡単に言ってくれるなあ。無理だろう、学生の身分でビルは。



「分かった、やっぱり俺を揶揄からかっているんだな、宮藤」

「そんなに信じられない?」

「……正直な。だって、そんなビルとか資金とか普通はあり得ないだろう」


「ふぅん。じゃあ……」



 頬を少しぷくっとさせ、宮藤はムキになって俺に抱きついてきた。――って、いきなり!? うそ!? これ、夢!?



「ちょ、ちょ、ちょ……! 宮藤、突然なんだぁ~~~!?」



 すげぇ感触とか匂い。

 こんなギャルに抱きつかれるとか、人生で初めて。宮藤のヤツ、いったいどうしたというのか……。



「これで信じてくれる?」



 宮藤は、子供をあやすみたいに俺の背中をポンポン叩く。……こんなのされては……信じるしかないだろう。そうだ、宮藤はこんなに一生懸命なんだ。俺が信じなくてどうする。もう疑うのは止めよう。



 ◆



 午後の授業中、屋上での出来事がずっと頭から離れなかった。隣の席の宮藤は、時折ちらちらと俺の表情を伺ってきた。


 そして、放課後。


 席から立つと、宮藤が話しかけてきた。



「賢、約束を果たしに来た」

「わ、分かった。心の準備は出来たつもりだ」

「うん、じゃあ行こっか」



 ええい、もうどにでもなれ。これが破滅の道であったとしても、俺に後悔はない。人生の僅かな時間を宮藤と過ごせたと思えば、それは十分、幸福な時間だ。


 いやいや、ネガティブになるな、俺。悪いクセが出た。そんな不吉を払拭してくれるように、宮藤は俺の手を握り、繋いでくれた。


「……えっ」

「驚いた?」

「そ、そりゃ驚くって!」

「いやさ、小島くんがこっちを見ているんだよね。うざったいからさ」


 なるほどな、確かに小島は機会を伺っているようだった。だが、宮藤が俺の手を繋いだ瞬間には涙目になっていた。


 残念だが、宮藤は俺の先約だ。



 そんなわけで学校を出た――。

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