1-3 ギルドマスター
魔獣をバラバラにしつつ、道を行く。彼の通った道はわかりやすい。彼の通った後に残る魔獣はただの肉塊で血抜きもしっかりしてある。人でも調理すれば食べることが出来るだろう。ただ、怪しすぎて、それをひろって食べる人はいないだろうが。
彼はあの黒い化け物を殺すために、その行き先を知りたかった。情報を集めるために、まずはあの村より少し大きい町を目的地としていた。その町には彼のいた村で採れた収穫物や作ったものを売りに出して、村の財源を確保するために何度も行ったことがあった。その財源を確保する中で世話を焼いてくれていたのが、冒険者ギルドのマスターである。彼はその人から情報を得ようと思っていた。
冒険者ギルドと言うのは、護衛や魔獣の討伐など、様々な仕事を請け負える人材が登録してあり、様々な人がそこに依頼を持っていきて、その依頼をこなした人に報酬を支払うという施設である。冒険者ギルドと言うのは名ばかりで、それぞれの町に定住して依頼を受けている者がほとんどで、冒険して生活している人は今はほとんどいない。どちらかと言えば、何でも屋言った方がわかりやすいかもしれない。
そして、彼はその町に着いた。町の名前は
彼は町の中央通りに並ぶ冒険者ギルドに迷わず移動して、その扉を開いた。冒険者ギルドの中に入ったこと自体は初めてだった。金銭のやり取りをしたのはこの町の入り口で行っていたのだ。そして、町の中では肉屋や魚屋で村の貯蓄としての食料を買った記憶だけだ。冒険者ギルドの場所はその前を取った時に、ギルドマスターに紹介されたから知ってるだけだった。
冒険者ギルドの中は、簡素な作りだった。正面に受付があり、その前にはテーブルと椅子が四つのセットが二つ置かれている。受付の横には掲示板があり、そこにこのギルドに来た依頼の内容が描かれた紙が貼られていた。受付にいた女性が彼に気が付くと、彼に声をかけた。
「ようこそ、福道ギルドへ。本日はどういった御用でしょうか」
「ギルドマスターに会いたいんだけど、いるか」
「申し訳ないのですが、ギルドマスターとの面会の予約はされていますでしょうか。されていない場合は、この台帳に予約を氏名を記述していただきます」
受付の女性が、一枚の書類を受付に出した。その後ろから誰かが顔を出した。それは彼も見覚えがある人だった。
黄色の紙の後頭部で結んで、尻尾のようにしている髪型。オレンジ色の大きな瞳に綺麗な唇。見た目は人間の十七、八だが、彼女は彼より長い時を生きていた。彼女は人間族ではないのだ。ディプリットと言う背があまり伸びない種族。伸びない代わりなのか、基礎運動能力が一般的な人間は敵わない程高い。
「あれ、どうしたの。世留」
彼女が発した声は、綺麗な高い声で、耳に入るだけで心地よい。彼女は不思議そうな顔でカウンターに手を付いて、ひょっこりと顔を出していた。その行動が子供っぽくもあるが、彼女は六十年以上は生きているという噂だ。本人に年齢の話をすると怒るので、彼も本当の年齢は知らない。
「と言うか、遊羽は? いつも一緒だったでしょ」
「ああ、遊羽の体は殺された。だから、殺した奴に復讐しようと思って。フェリアさんなら何か知ってるかもって思って、ここまで来たんだけど」
「え、殺された? な、なんでそんな平気そうなの?」
フェリアは彼の悲しみすらない、淡々とした様子に困惑していた。彼女は受け付けから出てきて、彼の前に立った。フェアリは彼の約半分ほどの背丈だが、妙に存在感があった。彼女は世留の目を見つめた。その瞳には
正気の光がない。ショックが彼をおかしくしたのかもしれない。
「……まぁ、いいや。情報って何が知りたいの」
「黒い化け物。何か、額に角があって、伝承に出てくる鬼、みたいな感じの。それの行先が聞きたい」
彼女は腕を組んで、難しい顔をして、宙を見つめた。
「ちょっと、わからないや。ごめんね」
「いや、知らないなら仕方ない。じゃあ、次はどこにいったらいい? ここなら情報集まるって場所は?」
「それは、大湖だね。
彼女は難しい顔から一転して、快活な笑顔で答えた。世留はその助言に納得して、ギルドを出ようとしたところで、彼女に引き留められた。
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