不運系守銭奴がいけてない
「はー強い異能持ちはいいわなー。刀なんて一度買っちゃえばあとは手入れ代だけだろ。うらやましいな~。」俺はここで生き残るために一日何百発の銃弾を撃てばいいのか。それでも怪物街という場所は金払いがものすごいいいから離れるわけにはいかない。例えばさっきここを悠々と通り過ぎて行った鳥の体の一部を持ち帰れば100万円。
そういうのを倒せれば老後の資金なんてすぐに貯まる。そうすればようやく安定した生活が手に入る。
もうこの地獄みたいな街にきて今日で一週間なんて信じられないくらい慣れてない。
俺は二年前まで営業マンとして生きていた。それなりに優秀だったけれど、出世は出来なかった。そのせいで金が貯まっていかない。老後資金を手に入れられるのは70歳くらいになる予定だった。そんな社会の輪から外れた人間、それが
その事実に気づいてからはこの街に来るのはあっという間だった。『職場を変えたなら』そんな希望をもっていろいろな職業を転々とすること10か所。金払いのいい所に出会えずに一般職には希望を捨てた。そんな時に見つけたこの求人に飛びついて、気づいたらこんな気味の悪い街でサバイバルをしていた。
「それにしてもあいつの能力強いな~。うらやましいな。羨ましい。」さっき見た光景を思い出しながら嫉妬の念に駆られる。いい感じにぼっーとしてしまっていた。この街ではそれだけで軽ーく命が飛んでいく。
『jtytyiu』気味の悪い鳥でビルが震える。「やっばいな。見つかってしまったわ」どこにいるかは見えないけれど視線を確かに感じて足が震える。今しなきゃいけないのはとにかく視線の主を探しながら、俺のことを見失わせること。
足のホルダーに入っている二丁のマシンガンを持って一番近くにあった柱の後ろに隠れる。
そこから少しだけ顔を出して前を見る。その光景に肝というか体全てを握られた気分になった。そこに静かに舞っていたのは、俺と同じ170cmはある巨大な鳥。どうやって飛んでるんだよってキレたくなるほどの巨体。嘴は鈍く輝いてるし、なんなら翼も金属のように光を反射している。
「多分10万円ぐらいか…。やる気出てきたな」
この街で怪物化した生物の値段はその動物がどれだけ現実離れしているか、つまりどれだけ強いかで決まってくる。こいつは明らかに物理法則を無視してる。そんな奴が安いはずがない。
『jtytyiiiu』威嚇の如く鳥が鳴く。
『ドッゴ』後ろの柱から奇妙な音が聞こえる。慌てて振り向くとそこには柱がなかった。
「…はっはっはっ」乾いた笑いしか出てこない。嘴で柱を一つ外しやがった。柱というかなり重い物を嘴で銜えながら、それも飛び方は変えずに舞っている。「あぁぁぁー」
とにかく乱射する。何処に当てるとかも考えずにただ取りにあたるように祈りながら。
「あと三十発。」それまでににこいつを落とさないといけない。じゃないと予算オーバーになる。赤字、自腹、収入が-。こんな時でもお金のことが頭に過ぎる。
お金のことを考えると冷静になれた気がする。こいつを打ち落とせたら10万だ。
『パーン』さっきまでの乱射とは違って落ち着いて一発。これは羽の付け根を狙って。『パーン』もう一発は顔を狙って。弱いイメージのある部位を狙って打ち込む。
すると顔の方は嘴で弾いて翼は無視。「弱点は顔か…。」希望が見えてきた。問題は嘴のガードをどうやってかいくぐるのか…。「決めた!」『jijyujui』今まで一番大きな声で鳥が鳴く。ここえ決めなきゃ俺が殺される。そんな確信を持たされるような声だった。怖くて、ごまかすように手に持った二丁のマシンガンをより強く握る。
連続した破裂音。それらを見てから鳥はよける動きを見せる。
それに合わせるように銃弾の軌道を曲げる。『っききゅぃ』今までの聞くに堪えない声の持ち主とは思えないほど可愛い声だった。そして次に聞こえたのは鳥が落ちる音だった。
ー桐畑錬司のまとめ&能力ー
性別 男
前職 営業職を転々と
能力 250mTまでの磁力を操ることができる
怪物街に来た理由 金払いがいいから
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