俺たちがいけてない理由 壱
いけてないイケメンたち
いい先生系タンクトップがいけてない
「ここが怪物街。」いくら2時だとは言ってもここのほとんどは日陰になってしまってるから普段着として使っているタンクトップだけだと若干寒かったかもしれない。
普通の街で生きているだけじゃまず見かけないほど多くの植物がビル群を飲み込んでいる。
そしてビル群の隙間からちらりっと見える鳥は信じられないほど大きかったり毒々しい色をしている。
俺は先週までただのどこにでもいる平凡な体育教師、
事の始まりは先々週、金曜日。俺が担当していた体育の時間に怪物化した人間と思わしき何かに俺の生徒が攫われた。
足取りは調べずとも分かるくらいには大々的にニュースになった。まず滅多に怪物化して理性をなくした生物はここを離れない。なのにわざわざここを離れて、一般人を攫っていたんだから、これ以上とないほど話題性がある。
話を戻すとその誘拐事件は俺の責任ではなく、その怪物化した何か『M‐43』を刺激した調査隊の所為という事になった。だからここにいるのは誰の所為でも無い。強いて言えば俺の勝手な正義感のせいだと言えなくもない。あの時ビビッて一歩も動けなかった。その事実が俺を苦しめ続けてくるのなら、せめてもの償いをとこの街に足を踏み入れた。それが俺が今ここにいる全てだ。
そしてもし叶うならば攫われた生徒を家族の元へと送り届けたい。
「ふっー」ここでは年間何十人という人が行方不明になってる。油断は出来ないと改めて心構えをつくる。
背中に背負った荷物は最低限。どうしても持ってきたかったものしかない。
例えば学校をやめる時に生徒たちに貰った寄せ書き。後はサバイバルで必要となりそうなものを素人ながらに選りすぐって持ってきただけ。
ライター、ペットボトルに入った水、タオル。簡単な寝具とテント。あとは腰にぶら下げている日本刀。ここに来るだけの為に打ってもらったもの。
ここ一週間、調査隊に入ることを決めてから片時も話すことなく持ち続けて一週間ながらも大分体に馴染んだ代物。
ここに来る前に訓練所にて一通りの訓練は終えてる。それに俺に放射線によって発現した能力が余裕を与えてくれる。そのおかげか思ったよりも心に余裕がある。
『tyuー-』聞くに堪えない声と音量でネズミの鳴き声が聞こえた。「…ふっー。は!」
鼠は見えないけど確実にこの辺りにいる。こちらに向かってきている。刀を抜いていつでも切りつけられるように心を落ち着ける。
その声の主は何も考えずに真正面に姿を現してくれた。姿は俺の知っている鼠とほとんど全部同じだった。色はドブネズミのような色。尻尾はピンク色で別の生き物のようにのたうち回ってる。細めに見ても俺の腕の太さ以上、幅は体育教師の中でもガタイのいい俺と同じくらい。外では見ることのない光景。
「こんなことは怪物街の常識!」自分に声をかけて気合を入れたところで攫われた生徒のことが頭を過ぎって体に無駄な力が入って動きが硬くなる。
その隙をつくように鼠が太く長い尻尾を振りがぶって俺を薙ぎ払う。反応速度が常人なうえ力んでいる俺はなすすべなんて存在しない。
そのまま傍にあったビルにたたきつけられて、めり込んで土埃が舞う。
「大丈夫!俺は大丈夫!!」必要以上に大声を出して気持ちを落ち着かせる。刀も放してない。もちろん体に傷一つない。タンクトップはたたきつけられた衝撃で敗れてるけれども…未だいける。「はっ!」切り替えをして冷静になれた俺をイメージする。少しずつ落ち着いてきたところにネズミの聞くに堪えないさっきと同じ鳴き声が響く。『tyuー-』辺りに舞ってた土埃が震えて視界が見えるようになってきた。
「元体育教師をなめるなよ。」生徒に教えるために少しとはいえ剣道をかじって、訓練所でも少し触れたんだ。
ネズミは一度決まったそのネズミの王道パターンといっても過言じゃない、尻尾での攻撃。『ズっ』地面が緩かったのもあっても足が地面に埋まる。来ると分かっていれば吹き飛ばされることはない。
無理やり足を地面から抜いてその流れで力いっぱい踏み込みながら刀を振り上げて太刀筋すら気にする余裕もなく振り下ろす。「jijijijijijijj」生物かどうかも怪しい声を出して刀の刺さった手首をちぎって逃げていく。一息つく頃にはもう見えなくて周りには生物の発する音がなくなっていた。
「うるさ…。なんだよ、あいつ。それなりに強いじゃん」
距離で言うと一キロは離れてるところからスナイパーライフルについているスコープを覗き込みながら、その後ろには二丁の小型短機関銃を置いている青年がぼそりと呟く。
ー留別深祷のまとめ&能力ー
性別 男
前職 体育教師
能力 体に傷がつかない
怪物街に来た理由 自責の念に駆られて
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