第276話 そういうこともある

 マスクに、ぶつかった黒いナニカ?

「なに?」

 マスクを取るとクワガタであった。

「……クワガタと正面衝突って…」

 人生初である。

 子供の頃なら大喜びしたであろうが…50歳を過ぎると喜べない。

 なんとなく触りたくもない。

 が…「チョビさんに見せてみよう」

 以前から昆虫を見せても興味をもたない愛猫チョビさん。

「こんな立派な角をもつクワガタなら?」

 触るのは嫌なのでマスクを外してポンッと置いた。

「とりあえず写真は撮っておこうか」

 ちょっと目を離した隙に部屋に入ってきたチョビさん。

 ジーッとクワガタを見ている。

 興味はあるのか?

 徐に前足で突いておられる。

「あっ…なんかイヤな予感…」

 チョビさん、ハサミの間に前足を突っ込んだ…。

『……んなっ‼』

 変な声をあげて飛び上がるチョビさん。

 手遅れだった。

『桜雪ーーー‼ コイツなんなの‼』


 なんか怒っているし、クワガタも可愛そうなので、外に逃がした。

 調べると『ヒラタクワガタ』らしいです。

 3000円~売ってました。

「売れるんだ…アレ」

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