第7話 おとまり
私の中の幸せでそれでいて不幸な感情を自覚してから、
とうとうあの人が泊まりに来る日になってしまった。
「ずっとここで待ってたの?寒くない?」
あの人は言う。
「ここは風が凌げるんだよ」
と答える。
2泊3日のお泊まりであったが、
事が動いたのは初日の夜である。
その日は私が親戚からもらったワインを開けていた。
「え、めっちゃ飲みやすいね!」
「美味しい〜」
他愛もない話をしながらアルコールが体内に入っていく。
気分が良くなる
実際何を話したかはあまり覚えていない。
ただ、楽しく飲んでいた。
おつまみはスーパーで買ってきたローストビーフ。
例の如く、あの人は飲むスピードも量も私とは段違いである。
それでも私のペースに合わせながら飲んでくれていた。
最終的には、
あの人は私よりも2杯多くワインを飲んでいた。
ほとんど酔っていないような顔して、
大丈夫?なんて聞いてくる。
「もう寝ようか、酔ってるし」
真っ暗になった6畳間
布団は別
「今は、好きな人いないの?」
あの人から聞かれる
アルコールでふわふわする私。
もうどうにでもなれと思った
けど理性がはたらいて直接言えるほどの度胸もなくて、
どうしたら少しでも意識してくれるかな、
なんて考えた
「気になっている人はいる、
女の子かもしれない 」
少しずつ解答を近づけていく
バレて距離をおかれた方がいっそのこと楽だと思った
避けられても良いと思った
このままいけばどうせサークル引退までの付き合いかもしれない
そうなってしまってもしょうがないと納得させた
「え、それって・・・
ごめん」
わかってた
頭の中で「ごめん」が反芻する
わかってた、はずなの
「いや、自惚れてるかも」
確信を持てていないあの人
ねぇ、あの時言えればよかったのかな
「ごめん」って言われてから
改めて言う勇気はなかったよ
「都合の良い方で、解釈していいよ」
黙り込むあの人。
それがあの人の答えだったんだ。
しんどかった。
あの日は寝れなかった。
朝起きてからも、この話を続けることはなかった
何もなかったんだ
あの夜
何もなかった
私の心には虚しさしか残らなかった
抑えきれなかった
その気持ちがあの人に迷惑をかけたんだと
どうしたらよかったかなんて考えられなかった
どうやらあの人は私と友情関係を続けるつもりらしかった
あの人らしいね
私は、何もなかったんだと自分の心に言い聞かせる
告白なんてするつもりなかったし
あれが告白だとも思っていない
ただ、あの「ごめん」が頭から離れないどころか
私の心に傷をつけ、ゆっくりと思考を蝕んでいくのは事実である
何がいけなかったんだろう
私も最初は友達のつもりだったんだよ
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