第5話 冷たい風とぬるい体

7人で解散した後、

私とあの人は駅のバスターミナルにいた。

あの人は今日中に高速バスで帰ってしまう。


「ねぇ、お酒飲まない?」


その一言の誘いに乗って、

私とあの人は12月の寒い季節に

外で缶チューハイを飲んだ。


「めっちゃ寒い」

「お酒のめば暖かくなるよ」

「一時的にね」


あの人は私よりもずっとお酒に強い。

飲むペースも私より速い。


「今、手温かいよ」


差し出した手のひらをあの人が握る


「本当だ、すごい」


ゆっくり微笑む。

満たされていく何か。

合法で手を触れた事実。


今なら酔っていたという口実ができる


一瞬でも脳裏によぎる悪魔な考え。

違う。

私はあの人に期待したい。


「もう帰っちゃうの寂しいな」

「また来るよ」

「またっていつ、私はもう東京に引っ越すけど」




「来月、泊めてくれない?活動ある日」




もう後戻りはできないと思った。

私はこの絶好のチャンスを逃してはならないと


「良いよ!やった〜」


すぐに判断した。

あの人が、家に泊まりにくる

2人だけの空間にいられる。


高鳴る胸の音。

お酒のせいなのか、より上がる体温。

間違ってないよね。

これは正しい判断なんだ。



この約束をして、あの人はバスに乗って帰ってしまった。




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