1章 王女気取りの魔法使い PARASITE_QUEEN
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「ああ、もうもうもうもうもう!! やだやだやだぁぁ!! なんで僕たちを狙うのさぁ! もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうううううう!!!!」
巨大な大きさを誇るビルが、まるで氷河期が訪れたのではないかと言わんばかりに凍り付いていた。
凍り付いたと思ったら、今度はアマゾンの中かと思い違えるほどに、ビルが木々に覆われていた。
それらの異常事態を背後に見据えながら、喉を傷めてもおかしくないほどに少年、
「はぁ……はぁ……、ちょっと、桐原くん……っ、まっ、待って……」
事態に追い詰められているのは桐原だけではなかった。ぜぇぜぇと肺呼吸を繰り返しながら、それでも表面上は情けない顔を見られたくないからか、冷静に取り繕う少年が桐原のやや斜め左で、彼に付きそうように足を動かしていく。
「宮西くん!! 顔なんて必死に作らなくても!? 今は足を動かすことに集中して!!」
「……はぁっ……はぁっ……、ちょっと……あっ……苦し……!」
息切れに仰ぐ整った顔立ちのその少年は、桐原途陽を視界の端で追いながら己の身体の様子に目を向ける。紺のブレザーの足元は燃えた痕、水に濡れた痕、その他もろもろでボロボロだった。毎日ある程度の時間を掛けてセットしている、耳まで掛かる程度の柔らかな髪質の茶髪もブレザーと同じのようだ。走っている途中で焦げた痕、水を含む痕跡が残ってしてしまった。
(……、いや髪のセットは関係ないか。なんせここはコンピュータで作られた仮想現実――――〈
高くそびえるビルで支配された街並みを、氷や木々が覆い尽くさんとしているはずなのに、雲一つない、憎たらしくなるほどに澄んだ青空には飛行船が優雅に浮かんでいる。『空気や水などの流体を操りたいのなら、まずは微分方程式について学びましょう』なんて女性のアナウンスが、上空の飛行船から脅威から逃げ惑う足音と相まって聞こえてきた。
自身の髪の毛をクシャクシャと触れながら考える。髪の毛一本一本の感触があまりにも現実世界と同じようで、一種の薄ら寒さまでも覚える茶髪の少年――――
しかし、そんなリアルさも背後の光景の前では消し去ってしまう。
――――
息を切らしながらも、いつものことかと笑いながら脚を動かす少年少女らを、唖然としながら目の端で捉え、それでも表情を取り繕う宮西は考える。
(……まったく、どうしてこんなことになったんだろう……)
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