《数式》により構築される魔法に満ちた仮想世界
安桜砂名
序章
双対の少女たち
――思わず息を呑むような光景だった。
中世カトリックを象徴するような、数多の人間が行き集うであろう、大きな白の十字架がそびえ立つ教会は半壊されていた。
まるで教徒の心の中を形作る柱のようなものを、何の気を咎めることもなく壊したように。
天井のあちらこちらが崩れ落ち、教会を象徴する十字架が地面に無残に落ちたその教会に、一人の少女が佇立する。
少女を着飾るのは、黒のタキシードに白の手袋。右手に携えるのは腰からつま先まではあろう、黒光りのレイピア。
肩まで掛かる金のミディアムヘアは、風に靡かれ艶を振りまく。
女神にまでも嫉妬を覚えさせるほどの相貌をもつ少女は、おぼろげに真っすぐを見て取る。
少女――――
対面に佇む少女は、あまりにも
紺のローブで身体を包み、身長ほどの長さの杖を左手に握る一人の少女が、レンガ造りの建物の上で屹立する。
腰にまで掛かる、夜空の星々に照らされる銀のロングヘア。
大人とも子供とも言いとれるような顔つきで、この世の誰よりも男を虜にしてしまいそうな姿容で、教会の上に立つ
夜空に広がるのは七色のオーロラ。
相違なる表情で、お互いを見据える神の領域に最も近いとされる二人の人外。
二人とも口を閉ざす。言葉は何もない。
それでも、形相だけでお互いの気持ちは汲みとれそうであった。
――言葉はない。
それでも、二人は同時に一歩を踏み出す。
――――それぞれを護る闘いのために。
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